「がんが治る」保証ないニセ情報が危険すぎる訳 間違った治療を選択しても責任は患者にある
本の著者である医師は、食事療法の成果として、このケースを誇らしげに紹介しているが、患者は同時に、脳腫瘍をガンマナイフ(放射線治療の一種)、頭蓋骨転移は開頭手術、そしてホルモン療法を行っていた。
「最適な医学的治療を行いながら徹底した食事療法を行うと、このように改善しうる」と医師は述べているが、治療効果の主体はどう考えても、ガンマナイフなどの標準治療とみるのが自然である。
「にんじんジュースでがんが消える」という書籍は多数出版されているし、「食事療法の権威」としている人たちの多くが、にんじんジュースを強く勧めている。
しかし、国内外の臨床試験で、「にんじんジュースでがんが消える」ことを証明したものは1つも見当たらない。そればかりか、アメリカ・国立がん研究所は、にんじんの主成分「β-カロチン」のサプリメントを摂取した人は、肺がんリスクが上昇した、と公表した。
実際、にんじんジュース等による食事療法を実践した患者や家族に聞くと、栄養のかたよりや食欲が減退するなど、かえって悪影響が出てしまったという。
日本の国立がん研究センターは、「食道がん・胃がん・肺がんについては、野菜と果物をとることで、がんのリスクが低くなることが期待される」とする見解を出したが、明確な結論は出ていないと付記している。
高額サプリメント「フコイダン」の罠
新型コロナの予防に効くとされた、フコイダン。もちろん、有効性は何も証明されていない「ニセ情報」だった。
このフコイダンは「がんに効く」として、一部のがん患者たちに信じられており、極めて高額なサプリメントが今も販売されている。
フコイダンの原材料は、「もずく」や「がごめ昆布」などの海藻。ぬめり成分に「抗がん作用がある」とされているが、がん患者を対象にした臨床試験で、有効性を証明したものは見当たらない。
2019年8月、「フコイダンエキス」という健康食品を、3年間で28億7000万円を売り上げた会社社長ら4人が逮捕された。医薬品として承認を受けていないのに「がん細胞が自滅する」と宣伝・販売した、医薬品医療機器等法の違反(未承認医薬品の広告、販売)容疑である。約3000円で仕入れた商品を、5万円超の価格で販売したというから、典型的な「がんビジネス」だったことがうかがわれる。
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