福井信英
2010年に卒業する大学生の就職内定率は、昨年に比べ随分悪化しているようだ。
本コラムを書き始めた2年ほど前に比べ、就職状況を取り巻く環境は厳しいものとなったが、いつの時代も人生の本質は変わらない。
大学とは、己を磨く場であり、己をしっかり磨くことができれば、自ずと望みの人生を歩むことができるはずだ。今回からは、本コラムの原点となるテーマ、「学生時代の学び方」に立ち返り、学生生活において、いかに己を磨き、鍛えていくかを考察していきたい。
●大学生活でまず最初に学ぶべきは、哲学・クリティカルシンキング
学生時代に最初に学ぶべき学問は何かと尋ねられたら、学部・学科を問わず、「哲学・クリティカルシンキング」と答える。哲学と聞いて、高校時代のイデアやロゴスという言葉を思い浮かべるかもしれない。しかし、私がここで述べる哲学とは、「哲学の歴史」ではなく、問いを立て、論理的に考え、真理に近づく活動、ととらえてほしい。
これらの学問ないし、思考の技術で磨かれるのは、
「物事を批判的に見て、問いを立てる力」
「論理的に思考し、証明する力」
といった、これからの時代に必要とされる考える力だ。考える力を正しく身に付けると、その後の学習効率がたいへんに高まる。だからこそ、社会人向けビジネススクールの雄、グロービスは初学者に真っ先にクリティカルシンキングの履修を勧めるのだし、教育効果の高い大学として名高い国際基督教大学(ICU)は、その教育のベースをクリティカルシンキングに置き、時間をかけて学ぶのだ。(参考:リベラル・アーツ教育を支えるクリティカル・シンキング)
●哲学・クリティカルシンキングは学習効率を高める
大学の講義がつまらないと感じている学生は多いだろう。そう感じる要因の一つに、高校と大学で求められている学習のスタイルが異なるという点が挙げられる。高校までの学習は問いが与えられ、決まった解答を書くという訓練が中心となる。一方、大学の学問は自ら問いを立て、議論を通じて考えを深めることに本質がある。
高校まではある意味、学校で教わることが絶対だった。なぜそうなるのか、他の見方・考え方はないのか、といった問いを立て、議論することはなかった。だから、教師の教えを一方的に吸収することを、「学ぶこと」と考え、大学でも自然とそれを期待するようになってしまうのだ。しかし、大学で期待されているのはまったく逆で、自ら疑問や問いを立て、調査や議論を通じて、より真理に近づくことなのだ。
高校と大学の間にある、「学習スタイルの変化」に、気づかないまま4年間を過ごしてしまう学生も多い。だから、大学の講義をつまらなく感じてしまい、これからの時代に必要とされる自ら問いを立て考える、という力が身に付かないまま社会に出てしまうことになるのだ。
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