そして、残りの人生において我慢や妥協をすることはしたくない、と考えたときに別れの決断に至るのです。もちろん1度は愛した相手。関係を維持しようと努力することは大事ですが、自分の人生や欲求、夢を犠牲にする必要はないのです。
ここにパラドックスがあります。私たちはウイルスによって否応なくさまざまな困難な事態を受け入れることになった一方、ある種の状況には「ノー」という方法を学ぶべきだと気がついたのです。あるいは、自分が欲しくないコトやモノは拒否する方法を知るべきだ、と。
これはつまり、「本音で生きる」ということ。簡単なことではありませんが、今は自分の気持ちに素直になって、自分の生活を変えてみるにはうってつけの時期なのです。
帰郷を考える人、自然と暮らしたい人
実際、自分の周りを見回してみると、誰もが自分の生活を変えたいと思っていることに驚かされます。アイルランドに両親がいるパリ在住の男性は、年老いた両親との残りの日々を近くで過ごしたいと望むようになりました。そして、自分の家族と上司にフランスからアイルランドへ移住できるようお願いしているところです。
ずっと山が好きだった別の男性は、パリでの仕事を辞めて自然の近くで生活し、人生を自分が本当に必要としているものに変えることを決めました。おそらくこの考えは長年、心の中のどこかにあったのでしょう……。ですが、彼はこれまでこの「夢」を実現できるかどうかを、自分に尋ねてみようとはしなかったのです。
ロックダウン期間中に私たちは、自分を見つめ直し、自分のこれまでの人生を振り返ることができました。それによって、生活の新たなペースやリズムを考えることもできました。ストレスや移動、義務(あるいは義理)的活動をより減らす一方で、自分や趣味、家族や家庭、あるいは精神的安定のための時間を増やすにはどうしたらいいか、というようなことです。
こうした「価値観のシフト」は、生活における多くのことに変化をもたらし始めています。
例えば仕事に対する考え方。仕事とは主に金銭的に生計を立てるためのものなのか、それとも、社会的な意味で幸せになり、社会の中で役割を果たして、有用だと感じるためのものか。時間や自由は、お金より大事なものなのか……。多くの人が思いをめぐらせ始めています。
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