「社会的成功」を収めても自己否定する人の思考 「ツレがうつになりまして」作者が苦しんだ訳

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私は自分を「変えたい、変えたい」と思っていました。「変わる」とはネガティブな自分を切り捨て、生まれ変わって新しい自分になることだとイメージしていました。

そのためにずっと自分の外に何かを期待していました。誰かが私にヒントをくれて、それにすがれば変われるんじゃないか、と。

でも違ったんですね。ネガティブな部分を否定せず、自分で自分を認めること、どんな自分も大切にいたわること、これが大事だったんです。

親の自己否定、子にダメージも

――今はあまり「生きづらさ」を感じていないですか?

はい。まだ発展途上ですが、多少イヤなことがあっても自分を責めずにすむようになってきました。

考え方を変えてよかったことのひとつは、家族との関係が良好になったことです。以前の私は息子の前で「私ってほんとうにダメだ」と自己否定することもありました。

でも、水島先生から「子どもの前で親が自己否定をくり返すのも、ひとつのDVなんだよ。子どもはそうされるとすごくつらいんだから」と言われ、「しまった!」と思いました。

それからは「一番身近な存在の家族を大事にしなくちゃ」と気づいて、かかわり方を変えました。うれしいことに家族もそんな私に応えてくれ、支えてくれるようになりました。

あらためてふり返ると、私の自己否定は「世間」と自分を比較するところから来ていたんだと思います。

「まわりの人と同じ」ができなくて自分を責めてしまうのは、世間の目を恐れていたからこそだったんだと思います。

でも最近、すごく大きな気づきがあったんです。それは息子の学校のPTA役員をしていたときに感じたことでした。

PTAという狭い「世間」のなかで、すごく上手に立ちまわっているように見える人でも、人と人との関係が壊れることや、「世間」というワクから外れることに恐怖を感じている。

つまり、私が恐れていた「世間」の人も、誰もがみな、同じように「世間」を恐れながら生きていたんです。

結局、私もほかのたくさんの人と同じだったんでしょうね。「世間」を恐れ、「世間」にふりまわされて生きてきた。

でも、そんなしょうもない自分を、やっぱり認めてあげるしかないと思うんです。「それでいい」って自分に言ってあげることから生きやすくなる道が開けていくかもしれません。

――ありがとうございました。

(聞き手・本間友美)

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