「社会的成功」を収めても自己否定する人の思考 「ツレがうつになりまして」作者が苦しんだ訳
ここでも、「まわりと違う自分」が私を苦しめました。「学校でも、社会人になっても、人として当たり前のことができない。本当に自分はダメなんだ」と、落ち込みました。
マイナス方向に考えるクセが
――細川さんはその後、絵の学校に通って漫画家となり、『ツレがうつになりまして。』(以下『ツレうつ』)のヒットとともに知名度も上がりました。いわゆる「社会的成功」を得たと思うのですが、それでもネガティブ思考は続いたんですか?
そうなんです。『ツレうつ』の本が売れてテレビドラマ化や映画化がされても、人から「すごいね」と言われても、ネガティブな自分は出てきました。
何かにつけて「やっぱり自分はダメなんだ」とふさぎこんでいました。マイナス思考になるクセがしみついてしまっていたんです。
なんでだろう、とあらためて考えてみると、自分の物事の考え方が、自己否定の方にしか向いていなかったからじゃないかな、と思います。
自己否定をすると、当然つらくなるし、いろんなことにイラ立ってしまいます。「私は何をやってもうまくいかないのに、恵まれてる人はいいよね!」と他人やほかの環境を恨めしく思うこともありました。
でも、そんな自分がやっぱりイヤなんです。それでまた「なんで自分は他人を恨むことしかできないんだろう」と自己否定に陥り、イラ立っては落ち込む、をくり返すというループにはまっていました。
泥沼ですね。だから、「もうこんなのはイヤだ! 苦しい、逃れたい」とばかり思っていました。
なんとかして自分を変えたくて、「ポジティブになれる」とか「自分を改革する」などをテーマにした本をたくさん読みました。でも全然ダメでした。
しかし、3年前、ある人と出会ったことが、自分が変わるきっかけになったんです。その人は、精神科医の水島広子先生という方でした。
水島先生は私に「自分を否定しているかぎりは前に進めない。どんなにイヤな自分でもまるごと認めなさい」と言ったんです。私は衝撃を受けました。
最初は「こんなひどすぎる自分を認めるなんて無理!」と思っていました。でも、それじゃ変われないっていうのだからしかたない。
「大丈夫、なんとかなるか」と自分に言い聞かせるようにし、ネガティブな自分が出てきても「まあそれも自分だよね。そう思うのもしかたがないよね」と思うようにしました。
そしたら本当に、少しずつ気持ちがラクになってきたんです。