「泣きたい私は猫をかぶる」配信公開決断の背景

山本幸治プロデューサー語るアニメ作品戦略

――当然、延期をしてでも映画館でやりたいんだという意見はあったと思います。その意見とどう折り合いを付けたのでしょうか。

ビジネスの観点でも、映画公開を前提に作ってきたわけですから、劇場でやりたいという思いは強かった。でも作り手の人たちは、作品を世に出さないと次にいけないと考えました。自分たちとしてはこの作品は完成させたわけですから。

(共同監督の)佐藤順一監督や柴山智隆監督にも、上映にこだわりすぎるより、配信でも予定していた時期に近いところで公開したいという総意をもらい、製作委員会に対しても、「配信に切り替える決断にクリエイターは反対していません。予定していた時期に配信でも公開できることを優先したい」と伝えました。

同時にNetflixともいい条件で契約を結ぶことができたので、製作委員会の同意も得られました。ただそんなに早く決断するのかと驚かれましたけどね。

映画は初日勝負だが、配信はいかに認知させるかが勝負

――結果的にはそのタイミングで良かったなという感じでしょうか。

緊急事態宣言がこんなに早く解除されるとは思っていなかったので、結果としては映画で公開することもできたのではないか、という意見もあると思います。でもその時点で未来の状況はわからなかった。今では配信に切り替えて良かったんだと思っています。

猫の「太郎」として日之出の元に通うムゲ。普段はクールな日之出だが、太郎にだけは素直な気持ちを打ち明け、いつしか日之出の支えになっていた © 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会

ただ、映画と配信の宣伝はこんなにも違うものかと思います。映画というのは初日勝負というか、いかに認知させるかが勝負なので。初日の公開までに観たいと思わせるための競争があります。そういう意味では口コミで広がる映画というのも少ないですよね。でも、Netflixの場合は、配信してからも口コミで長くやりたいという意向があった。だから宣伝もイチからやり直しです。

――とても素晴らしい作品だったので、スクリーンでも観てみたいと思った人も多いと思います。Netflixとの契約などもあるかもしれませんが、今後、スクリーンで観られる機会はあるのでしょうか。

そうですね。実際クリエーターやお客様からの要望もあるのでやりたい気持ちはあります。ただ先ほども言ったとおり、映画というのは初日勝負で、限られたスクリーンの中でお客さまに来ていただかなければならない。その中ですでにNetflixで配信されたコンテンツを再び正式な興行にのせることは難しいのではないかと感じています。契約というよりは、そちらのほうが大きいかなと思っています。

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