Jリーグ再開でも続くクラブ経営の厳しい行方 人気チーム浦和レッズで10億円赤字の可能性

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もう1つのアイデアは、3密を避けながら地域密着を意識した物販強化が挙げられる。松本山雅が本拠地・サンプロ アルウィンで実施した「山雅ドライブスルーマルシェ」が好例だろう。

5月24日の1回目は試合時に出店している飲食店10店のテイクアウトグルメと、クラブ直営の喫茶山雅のこだわり弁当などを販売。安全・安心に配慮しつつ、盛況だった。そこで6月7日には地域の福祉施設も参加する形で第2弾を開催。今後も工夫を凝らして開催することは十分可能だろう。

鹿島も6月14日にカシマサッカースタジアムで「ドライブスルーマルシェ」を完全予約制で実施しており、車社会の地方クラブではスタジアムを活用した展開が期待できそうだ。

地元で共存共栄できるモデル構築が求められている

3密や交通渋滞の問題が起きやすい首都圏や関西圏のクラブは同様の試みは難しいかもしれないが、地域性を考慮したやり方を模索すればいい。こうした物販であれば、試合開催に左右されることなく、収入増を図ることができるメリットがある。

今後、コロナの第2波、第3波が来る可能性もあり、再開したJリーグが再中断されることも考えられるだけに、「日常から稼げる手段」を各クラブがそれぞれに確立させていく必要がある。それがJ発足後最大の困難を乗り切る1つのポイントではないか。

「Jクラブにとっていちばんの強みは『地域との絆』。『お互い大変ですね』と苦境を分かち合い、支え合う関係ができていることが大きな財産です。それを糧にして、生き続ける方法を探していくことが肝要だと思います」と甲府の佐久間GMも強調していたが、今こそホームタウンと共存共栄できるサービスやビジネスを構築していくことが大切だ。

ドライブスルーマルシェに限らず、地元サポーターが喜んでお金を落としてくれて、クラブも生き続けられる試みはきっとある。それを貪欲に探っていく姿勢が今こそ強く求められるのだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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