Jリーグ再開でも続くクラブ経営の厳しい行方

人気チーム浦和レッズで10億円赤字の可能性

こうした中、Jリーグ側は三菱UFJ銀行や商工中金にコミットメントライン(融資枠)を設定するなど、手元資金の確保に奔走。クラブライセンス制度の特例措置なども講じて、懸命にクラブを守ろうとしている。

国税庁への働きかけも奏功し、これまでプロ野球界だけに認められていた親会社のスポンサー料の損金扱い(税優遇)適用にもこぎつけた。大企業を親会社に持つ名古屋グランパス、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸らには追い風が吹きそうで、ある程度のスポンサー料を投じてもらうことで目先の危機を乗り切れる可能性は高まった。

とはいえ、有力な親会社を持たない地方の市民クラブは厳しい。2019年にJ1に在籍しながら1年でJ2に降格した松本山雅FCを例に取ると、昨季27億円の営業収益を計上したものの、J2降格によって今季は23億円に減少する見通しだった。

だが、コロナ禍で売り上げのマイナス幅が拡大するのは間違いない。4月末には「この23億円のうち広告料9億9000万円・入場料収入5億1200万円がゼロになった場合、12億円の赤字を計上する」という最悪のシナリオをサポーターズミーティングで公表したほどだ。

今回、ガイドラインが発表され、7月中旬以降は段階的に観客を入れられることになったため、スポンサー料と入場料収入がゼロにはならないことがハッキリしたが、入場料収入は当初見込みより2億円程度は減りそうだ。他の収入を維持できたとしても、営業収益が20億円を割り込むのが濃厚。2012年のJ2初参戦から順調に経営規模を拡大してきた「優良クラブ」も予期せぬ停滞を余儀なくされるのだ。

観客をフルに動員できない厳しさ

2019年度の営業収益が14億5500万円と松本の約半分だったヴァンフォーレ甲府も「今季は10億円を死守することが必須」(佐久間悟代表取締役GM)と危機感を募らせる。

甲府の場合、資本金が3億6700万円、累積債務が1億0100万円あるため、今季2億6600万円以上の赤字が出ると債務超過に陥ってしまう。それを回避すべく、売上10億円確保、赤字を2億円程度にとどめることが最重要課題なのだ。

しかしながら、本拠地・山梨中銀スタジアムの構造を考えると、超厳戒態勢時は3000人程度しか観客を入れられない見通しという。厳戒態勢時になってようやく8000人程度に拡大できそうだが、入場料収入は前年度の2億8600万円の半分以下になるだろう。予定通りのスポンサー料を確保すべく、今はスタッフが関係先を駆けずり回っている状況だ。

仮に今季を乗り切れたとしても、日本経済が大きなダメージを受けている以上、2021~2022年のほうがより深刻な状況に陥ることも考えられる。「今後3カ年の中期計画を立てて、クラブ存続への道筋を探っていく必要がある」と佐久間GMも険しい道のりを覚悟しているという。

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