コロナ危機で叫ばれる「食料危機説」の虚実 食料は不足せず、問題は途上国の政治経済だ

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トウモロコシ価格が下がると、耕作地が重なる大豆の作付けが拡大することで大豆の価格が下がる。トウモロコシと大豆の価格が下がれば、飼料用で競合する小麦の価格にも下げ圧力がかかる。2008年には、1バレル=147ドルの最高値を付けた原油に引きずられ穀物価格も暴騰した。今回はまったく逆のメカニズムが働いている。しかも、世界経済の落ち込みから、全体需要は弱いのだ。

もともとコロナ前から、トウモロコシと大豆の価格は過去10年で最も安く、小麦は昨年、豪州の干ばつで若干上がったものの安値圏にあった。3月下旬に大豆や小麦が一時的に上昇したが、すぐに落ち着きを取り戻した。世界的な在庫の量は増えており、足元で価格はじりじりと下がりつつある。

コロナ禍で穀物生産が減少する懸念も、少なくとも主要生産国については少ない。アメリカや豪州の穀物農家は機械化が進んでおり、コロナによる労働力不足の影響もない。むしろ、原油安=ガソリン安は農業機械の稼働に追い風となる。

総量という意味では食料不足どころか、食料余剰による価格下落の可能性が高い。では、食料危機が起きないかというと、それはまた別問題だ。

食料危機を招くのは経済の悪化

食料危機を招く要素は2つある。食料そのものがない場合と、食料はあっても入手できない場合だ。コロナ禍で心配すべきは後者である。

国連世界食糧計画(WFP)は4月21日、2020年に全世界で2億6500万人が食料不安に陥るとの見通しを示した。2019年の1億3500万人から倍増となる。2019年に食料危機に瀕する人口が多かったのはイエメン、コンゴ民主共和国、アフガニスタン、ベネズエラ、エチオピア、南スーダン、シリアなど、経済的に脆弱で内紛がある国も少なくない。

こうした国々は衛生状態、医療体制とも十分ではない。感染拡大によるか、その対策によるかにかかわらず、もともと飢餓が問題となっている。経済がさらに落ち込めば、飢える人々が膨れ上がる。

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