ジブリが「調べるよりも記憶」を大切にする理由 鈴木敏夫×石井朋彦が語る「ジブリの仕事術」

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石井:鈴木さんも宮崎さんも自分の記憶力を信じているから、パソコンやスマホで調べると怒るし、大事なのは記憶力だってずーっと言い続けていますよね。

鈴木:例えば映画の監督の名前が思い出せないときあるでしょ? そういうとき、みんな検索したり、Wikipediaを見るでしょ。僕は絶対にしない。時間をかけてでも思い出す。思い出すまでにどのくらい時間がかかるか、訓練している。便利になった時代だからこそ、自分の記憶をどれだけ引っ張り出せるか。それを身につけた人って強いんですよ。

記憶には2つある

石井:覚えている人は、仕事もできるし、頭の中で整理整頓できているから結論も早い。鈴木さんや宮崎さんが、僕らには予想もしないようなことを発想するのは、その場で思いついているわけじゃなくて、覚えたことをいつも整理しているから、すぐに答えにたどり着くことができるからなのだと思います。

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鈴木:記憶って2つあると思うんですよね。整理整頓して覚えるものと、そのままで覚えるもの。本当は両方を身につけるべきなんだよね。

──そのままで覚えるというのは?

鈴木:見てそのまま、絵のように覚えちゃうっていうこと。絵で覚えていると頭に入りやすい。例えば僕は、数字は映像で覚える。中日ドラゴンズの大ファンで、昔からスポーツ新聞を丸暗記していたから(笑)。

宮さんは、映像で覚えたものを映像にする。一方、整理整頓して覚えたものは、言葉や文章にするときに役に立つ。人って記憶の動物だから。見たまま覚えるものと、整理整頓して覚えるもの、両方があると鬼に金棒だよね。

後編は、「人の適性を見抜く方法」「ジブリ流ストーリーの作り方」「印象に残る話し方」などをお伝えします。

鈴木 敏夫 スタジオジブリ 代表取締役プロデューサー

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すずき としお / Toshio Suzuki

1948年愛知県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。徳間書店に入社、「アニメージュ」編集長などを経て、スタジオジブリに移籍、映画プロデューサーとなる。スタジオジブリ代表取締役。著書に『映画道楽』『仕事道楽 スタジオジブリの現場』『風に吹かれて』など多数。

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石井 朋彦 アニメーション映画プロデューサー

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いしい ともひこ / Ishii Tomohiko

1977年、東京生まれ。幼少期をドイツ・ニュルンベルクで過ごし、高校で演劇を学ぶ。2年間の海外放浪ののち、1998年にスタジオジブリ入社。鈴木敏夫プロデューサーに師事し、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』などのプロデューサー補をつとめる。著書に『自分を捨てる仕事術』(WAVE出版)『思い出の修理工場』(サンマーク出版)がある。
 

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