日産「ゴーンの負の遺産」が重い足かせになる訳 6000億円構造改革は「終わりの始まり」象徴か
日産自動車が2020年3月期の連結決算で6712億円の最終赤字(前期は3191億円の最終黒字)に陥りました。世界的に自動車の需要が減少 。売上高が前年同期比14.6%減の9兆8789億円と大きく落ち込み、本業の儲けを示す営業損益段階でも405億円の赤字に転落したうえに、6000億円規模の構造改革費用を計上したのが主な要因です。
日産の最終赤字はリーマンショック後の2009年3月期(2337億円の最終赤字)以来、11年ぶりとなります。かつて経営危機に陥った際、資本提携を結んだルノーから送り込まれてきたカルロス・ゴーン氏がリストラに大ナタを振るった2000年3月期(6843億円の最終赤字)に次ぐほどの巨額赤字となりました。
今回の構造改革費用の大半は事業用資産の減損損失。投資金額を回収できないと認識した時点で固定資産の価値を減少させるのが減損の考え方ですが、要するに将来の台数需要見通しと比較して現在の生産能力が余剰であるためにグローバルな事業用資産が財務計算上5220億円分いらなくなったことを示しています。
剰生産能力を最適水準までスリム化
日産の世界販売台数が前年の552万台から493万台に減少したのは、グローバル需要が9200万台から8600万台に落ちた影響が大きく、これからの2年間もコロナショックで世界需要のさらなる急減は避けられません。もともと振るわなかったのに加えて、世界需要減少のトレンドに合わせて過剰になった生産キャパシティを最適なところにまでスリム化していく必要があるというのです。
確かにアフターコロナで2020年、2021年と世界中の耐久消費財需要は激減すると予測されている現状を考えると生産能力のスリム化は時宜にかなっていると考えるべきではあります。コロナによる長期の自粛の影響で収入が激減した世帯では、自動車を買い替えようという気持ちは沸きにくいでしょう。
これを1999年にゴーン前会長が発表した日産リバイバルプランになぞらえて“日産サバイバルプラン”と表現する人もいますが、本当に今回の構造改革で日産自動車は生き残ることができるのでしょうか。コロナショックという事情があるにせよ、私はこのタイミングで日産が巨額の赤字に陥り、構造改革を余儀なくされることに至ったのは、既存の自動車産業の“おわりのはじまり”を告げることを象徴しかねないニュースだと考えています。
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