日産「ゴーンの負の遺産」が重い足かせになる訳 6000億円構造改革は「終わりの始まり」象徴か
2つ目の事業機会がエネルギーです。電気自動車が社会的にコネクテッドな状態になると、そのネットワーク自体が巨大な仮想電力会社としてのネットワークになります。これはクリーンエネルギーの未来の最大の都市インフラになると目されていて、太陽光で発電した電力を自動車の中に貯蔵して、必要に応じて電力網に戻していくような新たなエネルギーネットワークが世界中の大都市で誕生すると考えられます。
そして3つ目の事業機会は人工知能や全固体電池といった新たな自動車のコアパーツの製造です。これらの3つの事業機会は、そこで業界のリーダーとなればIT業界のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)同様、それぞれの分野でのグローバルリーダー企業の時価総額が100兆円を超えるビッグビジネスへと育つことが予想されます。
これらのことを考えてみると、ゴーン時代の「負の遺産」によって過剰設備を抱えているうえに経営資源が分散して、研究開発が後れを取り、これからのリストラで多額の構造改革費用が必要な日産は本当に厳しい局面を迎えることになりかねません。
2023年に向けて、過剰になった生産能力を減損削減することで、アフターコロナの世界で利益が上がる体質になるというのが今回の構造改革計画ですが、その3年間で自動車産業全体では、新しい事業機会に向けたグローバル巨大企業同士のイス取りゲームが繰り広げられていきます。
今、どれだけの規模でどれだけの資本を投下できるか
自動車ネットワーク事業でも、電力ネットワーク事業でも勝ち残るのは最大シェアを抑えた企業体連合でしょう。人工知能や全固体電池でも勝ち組になるのはその分野に最大級の研究開発投資を投下できた企業です。つまり今、自動車産業に求められているのは2023年の利益ではなく、2020年時点の規模であり、2020年時点でのキャッシュなのです。
そう考えると、カルロス・ゴーン氏を放逐し、ルノー連合という世界的な規模を持つ企業グループから距離を置く決断をした段階で、日産はこの世界的なトレンドからの離脱を決めたことになります。
もちろんサバイバルに成功すれば2023年以降、企業として生き残ることは可能かもしれません。日本のパソコンメーカーの中でNECや富士通がレノボに、東芝がシャープと同じ鴻海に買収されて曲がりなりにも生き残っているように、ないしはソニーから売却されたVAIOが生き残っているように、日産も利益の出る自動車メーカーとしての地位は確保できるかもしれません。
しかし規模を小さくした生き残り策は、日産自動車のこれまでの世界的なブランド地位を考えればやはり“おわりのはじまり”であり、日産よりも小さな自動車メーカーの前にも同じ未来がちらつきはじめていることを示唆しているのではないでしょうか。
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