日産「ゴーンの負の遺産」が重い足かせになる訳 6000億円構造改革は「終わりの始まり」象徴か

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日産はゴーン時代の「負の遺産」と指摘される過剰設備に加えて、幅広い車種を自社開発して販売する「フルラインナップメーカー」を志向したことで、実力以上のモデル数を抱え、経営資源が分散。開発に後れをとった結果、魅力的な新車を投入できずにいるという問題を抱えています 。

決算と同時に発表された事業構造改革計画によればインドネシアやバルセロナ(スペイン)の工場を閉鎖し、2023年までに最大生産能力を2割落としていくことが生産能力の最適化であり、そうやって費用を削減していくことで日米中のコアマーケットとコア商品に集中し利益を確保できる状態へと戻していく計画だといいます。

加えて電動化と自動運転の2つのコアテクノロジーに資源を集中することを表明しています。その日産がサバイバルを計画する2023年の自動車産業はいったいどのような世界になっているのでしょうか。

2023年に自動車産業は大きな転機を迎える

拙著『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』でも詳しく解説していますが、実は自動車産業においてはこの2023年が大きな転機になると予測されていて、「レベル5」と呼ばれる一般道路でもドライバーを必要としない完全自動運転車が発売される節目の年になると予想されています。同時に地球温暖化を抑制するためのパリ協定の目標に沿って、2020年代を通じてガソリン車やディーゼルエンジン車の比率が減少し電気自動車(EV)が徐々にマーケットの主流製品へと移っていくことになります。

そしてこの2つの変化は日産にとどまらず世界の自動車産業の構造を大きく変えうる劇薬なのです。

日産やルノー、トヨタ自動車、GM(ゼネラルモーターズ)、フォルクスワーゲン(VW)といった世界の自動車メーカーが、これまでの100年間新たな競合の参入を阻んできた最大の参入障壁が内燃機関(エンジン)でした。このエンジンというテクノロジーの結集とも言える製品は、ベンチャー企業が大量生産できないノウハウの塊であって、その技術を持つことで世界の自動車メーカーは寡占状態を維持してきたのです。

ところがEVは違います。蓄電池、モーターといった駆動に必要な部品をそろえれば、理論上は異業種でも製造できます。実際、アメリカのIT大手グーグルのほか中国を中心に世界には新たなEVベンチャー企業が生まれ、つぎつぎと業界参入を始めています。

奇しくも日産が最終赤字を計上したのとほぼ同じタイミングで、アメリカのEVメーカーであるテスラはCEOのイーロン・マスク氏に750億円の成果連動型報酬を支払うことを決めました。その大半は株価上昇による報酬ではありますが、テスラの年間売上高も2.8兆円と日産の3割近くの水準まで近づいてきています。時価総額は16兆円とトヨタ(22兆円)にせまる勢いです。

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