アメリカ商務省は5月22日、中国のハイテク企業、政府機関、大学など33の企業・機関をエンティティー・リスト(訳注:アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリストで、事実上の禁輸対象)に追加すると発表した。人権問題やアメリカの国益との相反を理由にしており、指定された企業・機関はアメリカ由来の技術が使われた製品の調達が制限される。
具体的にはネットセキュリティー大手の奇虎360科技、通信機器の烽火通信科技、人工知能(AI)とロボット工学を手がけるスタートアップ企業の達闥科技、中国公安省物証鑑定センター(訳注:科学捜査の研究や証拠物の鑑定を行う国家機関)、ハルビン工業大学、北京コンピューター科学研究センターなどが指定された。その顔ぶれからわかるように、制裁のターゲットはセキュリティ、ネットワーク通信、AI、ロボット工学などの領域に集中している。
長期的な影響は米中関係の行方次第
今回の指定について奇虎360科技は、「商業活動や研究開発を政治化するアメリカ政府のやり方には断固反対する」と表明。しかし同社の日常的な経営に重大な影響はなく、顧客へのセキュリティ・サービスを中断することはないと強調した。達闥科技も「アメリカ政府による不公正な待遇の停止」を求めたが、今のところ同社の経営に影響はなく、顧客に対して製品とサービスの提供を続けるとコメントした。
先にエンティティー・リストに組み入れられた中国企業の状況を見ても、少なくとも現時点までは影響が限られているケースが大半だ。例えばAIを活用した音声認識技術のトップ企業の科大訊飛は2019年10月に制裁対象に指定されたが、同年の売上高は前年比27.3%増加した。2019年6月に指定されたスーパーコンピューターの開発を手がける中科曙光も、やはり同年の売上高が27.4%増加した。
当初懸念されていたより制裁の影響が小さいのは、アメリカ企業が開発した民生用半導体の多くが海外の工場で生産され、アメリカ由来の技術の比率が25%を超えないという抜け穴があるためだ。また、2019年5月に通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)がエンティティー・リストに組み入れられて以来、中国のハイテク企業の多くが制裁への対策を準備してきた成果もある。とはいえ長期的な影響はなお不透明であり、今後の米中関係の行方にかかっているのが実態だ。
(財新記者:葉展旗)
※原文の配信は5月23日
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