中国の電子商取引(EC)業界で、ライブコマース(訳注:生中継のネット動画による実演販売)が「コロナ後」の競争の主戦場になりつつある。5月25日、EC首位の阿里巴巴集団(アリババ)と同2位の京東集団(JDドットコム)がそれぞれ「618セール」(訳注:もともとは京東が創業記念日の6月18日に始めた大規模セール。現在は中国EC業界全体の上半期最大級のセールイベントとなっている)のマーケティング戦略を発表。激しく競合する両社が、そろってライブコマースを618セールの目玉に掲げた。
ライブコマースの草分けはアリババの消費者向けネット通販の「淘宝網」(タオバオ)だ。スタートから4年を経て、今やユーザーのトラフィックを集める有力ルートのひとつに成長している。アリババ副総裁の胡偉雄氏は、「618セールではライブコマースの販売規模だけでなく、(実演者と視聴者の)インタラクティブ性をより重視する」と意気込みを語った。
一方、京東は今年の618セールで初めてライブコマースを大展開する。芸能人やネットのインフルエンサーが実演販売する通常の形態はもちろん、ブランド企業のマネジャーや目利きのバイヤーなども招いてセール期間中に30万回を超える生中継を行う計画だ。
高い返品率や運営コストなどの課題も
両社がライブコマースを強化する背景には、新型コロナウイルスの流行期に打撃を受けた加盟店を鼓舞する狙いがある。「巣ごもり消費」はネット通販を通じた生活必需品の購入を押し上げた反面、アパレル、化粧品、大型家電などの分野では販売が大きく落ち込んでしまった。
そこで、ECプラットフォームのアリババや京東がライブコマースで618セールを大々的に盛り上げ、加盟店の販売促進を後押ししようという作戦だ。と同時に、自社のプラットフォームに対する加盟店のロイヤルティーを高め、コロナで減少した広告収入の回復につなげる目算もある。
もっとも、ライブコマースには有名ブランドの参画の少なさ、高い返品率、通常のネット販売に比べた運営コストの高さなどの課題もある。また、草分けのタオバオでも2019年のライブコマースの規模は2000億元(約3兆円)程度と、7兆元(約105兆円)を超える流通総額のなかではまだごく一部だ。それが618セールでどこまで伸びるか、目が離せない。
(財新記者:原瑞陽、沈欣悦)
※原文の配信は5月25日
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