「危険なリアリティ番組」量産するTV局側の事情 苦労しても出演者側はめったに得をしない

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リアリティスターの賞味期限は、実に短い。金銭面のメリットについても同様だ。賞金や出演料をもらって大喜びしても、それはあくまで一時のこと。

「Survivor」の優勝者には、税金をごまかして4年も刑務所入りをするはめになった人がいるし、社会階層の異なる家庭がそれぞれの妻を入れ替えて生活する「Wife Swap」の出演者の中にも、後に犯罪者となった人が複数いる。

トランプ大統領も「リアリティ番組出身」

リアリティ番組で長期にわたる成功を築いた人は、ごくごくわずか。そして、そのかぎられた人たちには「元から金持ちだった」という共通点がある。

リアリティ番組の出演は、彼らの「目立ちたい」「注目を集めたい」という願望を満たすのに役立つだけじゃなく、その“ふところの痛まない投資”が、さらなる利益を生むことがある。

一番の例は、いうまでもなくドナルド・トランプ。大物実業家の右腕になりたい人たちを競い合わせる「The Apprentice」がなければ、彼がアメリカ大統領になることはなかった。

「You’re fired!(お前をクビにしてやる!)」と厳しく言い放つ彼の姿が、決断力を持ったリーダーであるという間違った印象を一部の視聴者に与えたのは理由のひとつだが、ほかの形でもこの番組は彼を大統領選へとつなげている。

たとえば、マイケル・ムーアはドキュメンタリー映画『華氏119』で、放映局NBCがリアリティ番組「The Voice」に出演が決まったグウェン・ステファニーに、「The Apprentice」に出演したトランプよりも高いギャラを約束したことが彼を憤慨させたと指摘している。それがトランプの大統領選立候補きっかけだというのだ。

また、2018年に出版されたノンフィクション本『炎と怒り』でトランプ政権の内幕を暴露したマイケル・ウォルフは、トランプがもともと望んでいたのは自分のチャンネルを始めることで、選挙はその宣伝手段だったと示唆している。

結果的に本当に大統領になり世界一の知名度を手にした彼は、おそらく任期終了後、当初の目的に戻って何かしらの方法で「トランプチャンネル」の発信を始めるのではないか。

アメリカを代表するお騒がせタレントのキム・カーダシアンもリアリティ番組で成り上がった。実父はO・J・シンプソン事件で彼側についた有名弁護士、育ての親はオリンピック選手を経てビジネスマンになった才人で、恵まれた環境で育った。

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