感染症は新型コロナだけではないので、次のウイルスが来たときにまた同じようなことが起こります。今は非常に厳しい状況ですが、ここからいろいろ学んで対策を練って、変わらざるをえないと考えています。
狩野:無料セミナーも開催されたそうですね。
藪ノ:中小企業に対する融資制度についての最新情報などを伝えるセミナーを4月初めにオンラインで配信したのですが、約350人が参加してくれました。さまざまな補助金や給付金の申請など、日々目まぐるしく状況が変わっています。その最新情報を、どこで入手したら良いか、困っている飲食店経営者は少なくありません。
私たちには少しでも事業主の不安を解消したいという思いがありました。多くの飲食店が休業する中で、店主やオーナーが従業員やアルバイトとも話せず、1人でお店や自宅で悩んでいるケースが多かったようです。
350人も集うと、「自分だけではない」と心理的に少し安心します。チャットで時間の許す限り、質問を受け付けてそれに答えたのですが、非常に大きな反響がありました。
チャネルの多軸化やデジタル化が必要
三神:店舗だけで稼ぐのではなく、売り上げのチャネルを拡大していく。飲食店にとって新型コロナの影響によるマイナス面はたくさんありますが、いろいろな仕組みを作り変えるための時間ができたと考えることもできますね。なかなかできなかったデジタルを使ったビジネスモデルの高度化にも取り組めるかもしれない。
そして、同時にコンサルティングをされている藪ノさんのビジネス自体も、価値の創造の仕方が変わってきている印象を受けました。
狩野:飲食業と同じく、農作物など食材の生産者も販路を失って危機に直面しています。次はそうした生産者の危機を支え合いで乗り越えようとしている「坂ノ途中」の小野邦彦社長に話を伺います。坂ノ途中は農薬、化学肥料を使用しない野菜の宅配を手掛けています。
小野さん、生産者は今、農作物の販売先にかなり困っているようですね。
小野 邦彦(以下、小野):そうですね。農家は非常に多様なので全員が全員ではないのですが、われわれの取引農家さんの場合、レストラン向けの卸や、学校給食向けの需要を見込んで、田畑に作物を植え付ける「作付け」をしている生産者はお困りになっています。
誰に何を売るかを考えて栽培している方々なので、数カ月先を考えて作付け計画を立てなければなりません。先が読めない今の情勢下で栽培計画を立てるのが、非常に難しいという話が多いです。