さて、ここからは東洋経済オンラインが掲載する実効再生産数を見るうえでの注意点を示しておこう。
「報告の遅れ」というバイアス
注意点は、大きく2つある。今回の計算式を考案した西浦教授は「簡易的な計算のために報告日ベースの直近7日間の新規感染者数を使っている。そのため、これによる実効再生産数では、週のうちの1日1日の増減など細やかなダイナミクスは相殺されてしまう」と指摘している。
もう1つは、報告日別の新規感染者データを使用することによる問題だ。現実にはときどき報告の遅れが生じ、遅れた分が後に加算されるため、実態と異なる新規感染者の山が生じることがある。これによって実効再生産数は実態とやや乖離することもありうる。
西浦教授は「このゴールデンウィーク中でも実際に東京都で報告の遅れがあり、その影響で実態とは異なる新規感染者数の山が少しできた」と語る。実効再生産数のグラフを見ると、5月2日から小さな山ができているが、これは東京都の報告遅れによる影響だと考えられる。
いずれにしろ、リアルタイム性を重視し簡易的な計算となっていることによる制約があることは頭に入れておくべきだ。しかし、「それでも新型コロナの流行動態を把握するには十分機能する」と西浦教授は語る。
西浦教授のチームが専門家会議などで公表している実効再生産数では、調査結果から発病時刻を推定したり、高度な統計処理を施したりしてより精緻な数値が推計されている。行動制限など政府の対策がどれだけ効果を持ったのかを評価するために実効再生産数は使われてきた。
しかし、精緻に推計する分、時間はかかる。そのため、広く国民が新型コロナの流行状況を理解するために、より迅速に計算できる実効再生産数が求められていた。
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