遠慮しない「フェミニズム誌」熱く求められる訳

雑誌「エトセトラ」が切り開いた新ジャンル

松尾社長がフェミニズムに関心を持ったのは、大学時代。大学図書館にあった上野千鶴子氏、斎藤美奈子氏などの本が面白かった。同じ頃、北原みのり氏が作家デビューをし、憧れたという。専攻は国際法で、従軍慰安婦問題を研究した。卒業後、編集プロダクションを経て河出書房新社に転職。15年間で実用書、文芸書などさまざまな部署を体験した。

女性小説の面白さを知ったのは、池澤夏樹氏編集の世界文学全集編集チームにいたとき。イギリス文学の『ジェイン・エア』を妻の視点から描いた小説を読んで衝撃を受け、「視点をひっくり返す面白さ、女性作家の面白さをまざまざと知った」。

2009年1月に出たその本をきっかけに、徐々に女性関連の本を出すようになる。2017年に刊行され、注目を集めた『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』の編集者でもある。

フェミニズム専門をうたえる時期が来た

独立は、そうした流れの延長線上にあって、自然な選択だったと話す松尾氏。「SNSなどを通じて読者が見えていたし、本の刊行イベントでもすごく熱い気持ちが返ってくる。また、独立系出版社の先輩たちがここ数年道を切り開いてくれたおかげで、流通ルートもできていた。出版社の1ジャンルとしてフェミニズムの本を出すよりさらに進めて、フェミニズム専門でうたえる時期が来た」と判断した。

ジェンダーをめぐる問題は、「はっきり言わないとダメだと気づいた。SNSで怒りを吐き出すだけでなく、私たちが言っているのはフェミニズムなんだ、と大声で叫ばないといけない」と言う。

そう思うようになったきっかけは、退職の少し前の2018年7月、東京医大の不正入試問題が明るみに出たことだった。デモに参加し、声を上げる大切さを実感。2019年3月、実父による娘の性的虐待を巡る裁判などで無罪判決が相次ぐと、抗議するフラワーデモを北原みのり氏と呼びかけた。その実録も4月、『フラワーデモを記録する』として刊行している。

性暴力は、松尾氏にとって大きなテーマの1つで、これからも取り組んでいきたいと言う。「ポルノを批判すると、すぐに『表現の自由を侵害するのか』という反対意見が出てきますが、そもそも女性の性や身体をポルノ消費の対象にすることが、人権侵害ではないかと思います」。

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