世界市場を狙う集英社、「ジャンプ」の勝ち目

電子コミック事業の海外展開を戦略的に推進

「これまで正規ルートがなかった地域の海外の読者にも、漫画アプリを通じて電子コミックを提供できれば、市場拡大のチャンスになる」(細野編集長)との思いが、MANGA Plusを通じての世界配信につながった。

細野編集長によると、MANGA Plusのサービス自体が、海賊版サイト対策になっているという。公式アプリを通じ日本の読者と同じタイミングで最新話を、しかも無料で読めるなら、あえて海賊版サイトにアクセスする必要がないからだ。結果的に正規のMANGA Plusの会員数が大きく伸びる一方で、ジャンプ作品の掲載を取りやめる海賊版サイトも出始めている。

韓国漫画などが脅威に

MANGA Plusの普及を急ぐもう1つの理由として、韓国、中国の漫画作品の勢力拡大もある。この2国の漫画は、韓国系の『Naver Webtoon』、中国系の『快看漫画』『騰訊動漫』といった漫画アプリで多くの読者を獲得。米国など自国以外の国々でも読まれ始めており、日本漫画のライバルとして無視できない存在になってきた。

集英社の公式漫画アプリ、少年ジャンプ+の細野編集長。海外向けの電子版『MANGA Plus』のプロジェクトマネージャーも務める(記者撮影)

こうした韓国、中国系漫画アプリの特徴は、オールカラー、かつ縦スクロールで読む作品が主流であること。日本の漫画で主流の横読み形式は、漫画の掲載媒体の中心となってきた紙の漫画誌や単行本を前提に普及したものだが、韓国や中国の電子コミックは縦読みが常識となっている。

Naver Webtoonと資本業務提携しているLINE Digital Frontier(漫画アプリ『LINEマンガ』の運営会社)の平井漠取締役は、「縦スクロール作品はスマホに適した表現方法。海外だけでなく、日本でもすでに若い世代を中心に受け入れられている」と話す。実際、LINEマンガの無料連載で人気上位の『女神降臨』『外見至上主義』は、Naver Webtoon掲載作品の日本語版で、縦読み形式での配信だ。

韓国、中国系の漫画アプリが世界で普及し、海外で縦スクロール作品が漫画のスタンダードになってしまったら、横読み形式の日本漫画は存在感が薄れてしまいかねない。集英社にとって、MANGA Plusは、そうした漫画の電子版世界標準を懸けた戦いに勝つための武器でもあるのだ。

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