世界市場を狙う集英社、「ジャンプ」の勝ち目

電子コミック事業の海外展開を戦略的に推進

具体的には2019年1月に海外(中国、韓国は除く)を対象とした漫画アプリ、『MANGA Plus by SHUEISHA』のサービスを開始した。ONE PIECEやドラゴンボール超、鬼滅の刃、『僕のヒーローアカデミア』など、週刊少年ジャンプや関連漫画誌に連載中の30作品以上に加え、『NARUTOーナルトー』など完結済みの人気作を復刻連載して公開している。

集英社が自社で漫画アプリを世界展開するのは今回が初。これまで北米や中南米、欧州、アジアで紙の単行本出版や電子コミックの配信は行ってきたが、それらは契約した現地出版社などによる展開だった。それに対して今回は、週刊少年ジャンプや少年ジャンプ+の編集部が直接運営するという力の入れようだ。

連載中の作品は、日本での掲載漫画誌の発売日に、最新話が英語、スペイン語、タイ語(一部作品)の3言語に翻訳されて配信される。つまり、海外のMANGA Plusの読者は、日本の読者とまったく同じタイミングで人気連載の最新話が読めるのだ。

最新話を無料で公開

さらに、この公式アプリは広告収入型のビジネスモデルで運営されており、ユーザーは配信作品の第1話から数話と、最新話までの数話が無料で読める。

海外向け漫画アプリ『MANGA Plus』のトップ画面。4月に日本国内で連載が始まった『森林王者モリキング』も即座に海外へ配信された
同アプリ内で公開されている英語版『ONE PIECE』の一場面(©︎Eiichiro Oda/SHUEISHA)

海外には日本の漫画を愛する多くのファンがいる。この大盤振る舞いともいえる配信サービスは、世界中のファンから大きな注目を集めアクセスが殺到。米国やタイ、メキシコ、インドネシアなどを中心に、サービス開始から1年半で月のアクティブユーザー数が370万を超えるまでになった。

ではなぜ、集英社はそこまでして、電子コミックの海外展開に力を入れ始めたのか。

MANGA Plusのプロジェクトマネージャーも務める少年ジャンプ+の細野修平編集長は、まず2つの理由を挙げる。「1つは、海外では多くの人が海賊版サイトでジャンプ作品を読んでいることへの危機感。さらに、海外市場の可能性に以前から大きな魅力を感じていた」。

電子コミックの海賊版サイトについては、国内でも「漫画村」が2017年から2018年前半にかけて社会問題化。出版社や書店・流通、漫画家などの被害額は3000億円を超えたともいわれている。政府が対策に乗り出し、「漫画村」は2018年4月に閉鎖される。その後の規制強化などもあって、国内での海賊版問題は一時よりは沈静化しつつある。

一方、海外ではいまだに海賊版サイトが横行している。日本で人気作品の最新話が配信されるたび、海外の海賊版サイトにすぐ無断で掲載され、多くの海外読者がそこに集まるという悪循環が続いている。

出版社にとって、こうした海賊版サイトの存在は、正規の商品の販売減につながる大問題だ。しかし、裏を返せば、ジャンプ作品を何としても読みたい海外の読者がそれだけ多くいるということ。また海外では、ジャンプ作品が紙の単行本や電子コミックで提供できていない国もある。

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