「ビッグモーター」巡る損保と伊藤忠のすき間風 賠償保険などの引受要請に、大手は「時期尚早」
「保険を引き受けて当然だろ、というような高圧的な印象を受けた。あの人たちは、われわれの現状をまったく理解していない」。損害保険大手のある役員は、そう言って深いため息をつく。この役員が言う「あの人たち」とは、伊藤忠商事のことだ。
さらに、ここで言う「保険」とは、伊藤忠商事と子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社が共同出資によって発足させた、ウィーカーズ(旧ビッグモーター)との保険取引を指している。
伊藤忠などの3社連合は、ビッグモーターとその子会社の全事業を会社分割のかたちで承継し、ウィーカーズとして5月に発足。経営再建に向けて、事業基盤を整えるため、店舗の火災保険といった管財保険の手配を進めていた。
「自管賠については時期尚早であり論外」
一方で、大手損保各社は管財保険の引き受けについては慎重な姿勢だった。中でも、「自管賠(自動車管理者賠償責任保険)については、はっきり言って時期尚早であり論外だった」と同役員は話す。
それもそのはず。自管賠とは、顧客から修理などで預かった自動車を損壊させるなどした場合に、その賠償費用を補償する保険のこと。ビッグモーターはその自管賠を悪用し、賠償費用を保険会社に不正に請求していた疑いがある。
そうしたコンプライアンス体制の課題が、社風も含めて払拭されたかはっきりしていない段階で、社名と経営主体が変わったからといって、おいそれと自管賠を引き受けるわけにはいかなかったわけだ。
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