世界市場を狙う集英社、「ジャンプ」の勝ち目 電子コミック事業の海外展開を戦略的に推進

看板漫画雑誌の『週刊少年ジャンプ』や月刊『ジャンプSQ.』、さらに『ONE PIECE』『キャプテン翼』といった人気作品の単行本も無料公開──。新型コロナウイルスの感染拡大で、3月2日から臨時休校とするよう全国の小中高校へ要請が出されたことを受け、出版大手の集英社は、自社が運営するウェブサイトや漫画アプリで一部コンテンツの期間限定読み放題に踏み切った。
読者からの反響は大きく、特設サイトにはアクセスが集中し、一時はサイトがつながりにくくなるほどだった。休校が長期化したため、コンテンツの一部は5月下旬まで無料公開を延長。「物流が滞った東日本大震災の際にも、週刊少年ジャンプをウェブで無料公開して読者に喜んでもらえた。休校になった子どもたちのために、検討し始めてから数日で無料公開が決まった」(漫画アプリ『少年ジャンプ+』編集部の中路靖二郎副編集長)という。
海外でも強い『ドラゴンボール』
週刊少年ジャンプは、いわずと知れた少年漫画誌の雄だ。1997年から長期連載され空前のヒット作となっているONE PIECEは、2020年4月に単行本の全世界累計発行部数が4億7000万部を突破した。直近では、2019年4月のテレビアニメ放送開始をきっかけに、『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』が大ヒット。5月に発売された単行本(20巻)の初版部数が280万部、シリーズ累計6000万部というすさまじい人気ぶりだ。
ジャンプから生まれた作品は、漫画やそのIP(知的財産権)を利用したアニメ、映画、ゲームなどが海外でも高い人気を誇る。ONE PIECEの単行本は海外累計発行部数が8000万部を突破した。
2018年末公開の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』は海外興行収入が80億円超を記録。バンダイナムコエンターテインメントが15年から配信するスマートフォンゲーム『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の海外累計売り上げは推計で800億円を超える。
こうした人気作品の海外での知名度を生かし、集英社が今、戦略的に力を入れているのが、電子コミック事業の海外展開だ。