無駄がなくスピーディ、登場人物の私生活も描かない
この2部構成のスタイルは画期的なものに思えるが、実は苦肉の策から生まれたものでもあった。2010 年に全20シーズンで完結した本作の放送がスタートしたのは1990年のこと。当時、「1時間のドキュメンタリー・タッチのドラマは、視聴者にはウケないと放送局に言われた」と語るのは、本作の生みの親である才人ディック・ウルフ。そこで考えたのが、2部構成でひとつの事件を描くというものだった。
20分程度で刑事ドラマのパートを描くには、時短しなければならない。そのためにウルフが取った方法は、「バンバン」という音を合図に日時と場所のテロップが出て、瞬時に場面転換を行うというもの。移動のシーンなどが必要なく、結果として実に無駄がなくスピーディな展開を生むこととなった。また、登場人物のプライベートを極力描かないという点も特筆に値する。
本作の主役は、あくまでも事件そのもの(脚本)なのだ。
スピンオフにおけるフランチャイズ方式がトレンドに
これは、2000年代に米国テレビ界を席巻した、犯罪捜査ドラマ・ブームの顔とも言える『CSI:科学捜査班』の初期のコンセプトでもある(シーズンが進むにつれて、キャラクターの私生活が増えていった)。
実は、『LAW&ORDER』は全20シーズンの中で、その人気、視聴率が最高潮に盛り上がりを見せたのが10年目を迎えたあたりから。これはまれなパターンなのだが、『CSI:科学捜査班』が登場したのが2000年なので、ちょうどこの時期と重なる。その後、『クリミナル・マインド』や『コールド・ケース』などの犯罪捜査ドラマがあふれかえることになるわけだが、そもそものルーツは『LAW&ORDER』だと言える。
1999年には、『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』というスピンオフ(姉妹番組)が誕生した。これは登場人物のひとりを独立させてスピンオフ番組を作るという従来のやり方ではなく、設定は一緒で舞台となる場所やメンツが異なるというもの。この後、本作には何本ものスピンオフ番組が誕生するのだが、これはフランチャイズ方式と呼ばれている。
『CSI:科学捜査班』の大物プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーが『LAW&ORDER』から得たものはクリエーティブな面だけでなく、元祖とも言うべきウルフのフランチャイズ方式を手本としたことは本人も語るところで、『CSI:マイアミ』『CSI:NY』を世に送り出し、映画界だけでなくテレビ界でもビジネスとして大成功を収めた。
このほかにも『LAW&ORDER』に影響を受けた番組は多く、アメリカのTVドラマと業界に与えた影響は計り知れない。
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