働き方イノベーション8つのパラダイムシフト クラウドワーカー交流会で語られたメッセージ

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 2014年3月21日、六本木・グリーのセミナールームに、プログラミング、デザイン、ライティングなど多種多様なスキルを持った10代から60代までの男女約500人が集結した。彼らの居住地は、北は北海道から南は九州まで日本各地に散らばり、普段は決して顔を合わせることのない個人のワーカーたちだ。
 3.11の震災以降から急速に高まる社会トレンド“新しい働き方”の熱気に満ちたこのイベントは、インターネットを通じて企業と個人の仕事のマッチングを行うクラウドソーシングと呼ばれるサービスのプラットフォームを手掛ける業界の雄、クラウドワークスのサービス開始2周年の記念日に、登録ユーザーの交流を目的に行われたものだ。
 クラウドソーシングは、高度な専門的スキルを持った個人の仕事取得の場としてだけでなく、年齢や家庭環境、居住地などの制約条件により満足な仕事を得られない地方居住者や、主婦、シニアにまで広がりを見せるほか、企業利用においてもスピーディなスキルやアイデアの調達をメリットに、今や、正社員の抱え込みに困難なスタートアップだけではなく、大企業が続々と活用するまでに、その価値を高めている。
 今回は、同イベント内の基調講演として行われ、この社会イノベーションの潮流に対して示唆に富むメッセージを投げかけた、一般社団法人ソーシャル・デザイン代表理事で、次世代事業モデルの構築を得意とする経営コンサルタント、長沼博之氏の語りをまとめてお届けする。
(本記事は、3月21日に東京・六本木で開催された「クラウドワークス2周年記念ユーザー大交流会」の長沼博之氏の講演をまとめたものです)

「働き方が世界規模で大きく変わっている」

クラウドワークスは、創業以来、時代をつくる企業、ソーシャルチェンジを実現していく企業としてたいへん注目しています。私自身は、経営コンサルタントを行いながら「ソーシャル・デザイン・ニュース」というウェブメディアを運営し、次世代の主流となる情報を集めて発信を行ってきました。その中で感じたことは、「働き方が大きく変わっている」ということでした。あらゆるビジネスの世界の動き、社会の動きを見ていけばいくほど、働き方が根本から変わっていることがはっきりと見えてきたのです。

まずは、現代における労働の正体、働き方の問題点をいくつかピックアップしていきましょう。ひとつは、「抽象的な労働」という問題です。学生たちは学校で「クリエーティブになれ」「個性を発揮しろ」と言われて育てられていますが、一歩社会に出て働き始めると、企業のシステム、テクノロジーに組み込まれていく中で、個人が抽象化されていきます。企業側は、時給いくらで、何人を働かせれば、会社にとっていくらの利益になる、と考えている。好きなことも嫌いなことも名前も持っている個人が、会社の中で極限的に抽象化されていくという流れが、広がって加速しているのが現代です。

もうひとつは、「企業内の雇用における矛盾のサイクル」というものがあります。社内における仕事を外部のクラウドソーシングに投げると、よりスピーディに、いい仕事がどんどん生産されていきます。すると、その会社の中にいる従業員たちの労働価値は下がっていきます。このサイクルはもともと大企業にあったものですが、最近はさらに加速しています。

このような話をすると、「絶望的だ」という感想が漏れ聞こえてきます。ブラック企業に関する話題も含め、働き方に関するどのようなニュースも暗いものばかりだという印象を持たれているようです。しかし、実はこれらの話題は、まったく「絶望」ではありません。むしろ「希望」なのです。

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