プロ野球、コロナ不況で「球界再編」にも現実味 「12球団+24マイナー球団」案に議論する価値

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また「コロナ後」に予想される深刻な経済不況も、球団の売り上げに影響するだろう。

こういう状態が収束するのは2022年以降になるとも言われる。ここまで長引けば経営状態が悪化する球団も出てくる。新型コロナ不況からの「球界再編」も現実味を帯びてくるのではないか。

これまで拡大路線をとってきた各球団は新たな戦略を立て直す必要に迫られています(筆者撮影)

球団は生き残るために「ダウンサイジング」を余儀なくされるだろう。

これまでの200万人の観客動員を前提にした経済規模ではなく、100万人を下回っても採算が取れる規模を目指すことになるのではないか。そうなれば選手の年俸抑制は不可避だ。それに加えて、選手数の削減も考えられる。

現在のNPB球団は70~90人の選手を抱えている。一軍の試合に常時出場するのは40人程度で、他はほとんど二軍三軍の試合にしか出ていない。しかし年俸だけでなく、住環境や練習環境を提供するなど「丸抱え」で選手を養っている。

年間60試合ほどの二軍主催試合は、ソフトバンクのように有料指定席を販売している球団もあるが、阪神、広島、西武などは入場無料だ。

二軍の試合運営費用は球団が負担している。二軍本拠地球場も所有している。二軍、三軍の指導者やスタッフ、トレーナーなども雇用している。これらはすべて一軍選手の興行収益から出ている。完全な「持ち出し」だ。こうした手厚い「育成システム」も見直さざるをえないだろう。

12球団+24マイナー球団の現実味は?

この騒動の中で、あまり目立たなかったが4月上旬、オリックス・バファローズの湊通夫球団社長は、12球団+24マイナー球団による新しいエクスパンション構想を口にした。

デイリースポーツによれば「王さんのおっしゃる16球団、つまりトップリーグを増やすパターンと、トップリーグの球団数を増やすのではなく、マイナーリーグを増やすパターンの2案を作り、どちらが収益モデルとして、また野球人口の増加につながるか議論すれば良いと思います」とのことである。

ソフトバンクホークス王貞治会長の「16球団構想」は、新型コロナ禍の前に発表されたものだ。しかし湊社長のこのプランは「ポストコロナ」のプロ野球を見据えたものだと考えられる。示唆に富んだ提案ではないだろうか。

この話の出どころは、オリックス球団の宮内義彦オーナーのようだ。今年85歳になる宮内オーナーはグループの経営からは身を引き、肩書はオリックス・バファローズオーナーだけになった。1988年に南海、阪急がダイエー、オリックスに身売りをした「球界再編」当時の経営トップでは、唯一の生存者だ。

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