プロ野球、コロナ不況で「球界再編」にも現実味 「12球団+24マイナー球団」案に議論する価値

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2004年の「球界再編」では宮内オーナーら球団経営者側は近鉄とオリックスなどが合併し、1リーグ10球団の体制に移行しようとした。これは当時の古田敦也プロ野球選手会長が主導するストライキで阻止された。

実は、宮内オーナーの構想は「その先」があったのだ。10球団にするだけではなく、球団の傘下に2軍、3軍の球団を設け、これを全国各地に設置しようというものだった。

2軍、3軍にはアマチュア野球も参加し、プロアマが連携して野球のすそ野を広げようとするものだった。宮内オーナーは「球団が減るのではなく、増えるんだよ」と言っていた。

しかしこのときは巨人の渡邊恒雄オーナー(当時)の「たかが選手が」発言もあって、経営者対選手会の対立が激化し、宮内オーナーらのプランは議論されることはなかった。

オリックス湊社長の「12球団+24球団」プランでは、トップリーグ1チームに対し、マイナーリーグ2チームが傘下に入る。マイナーは独立採算制のチームにする。

マイナー選手の年俸はマイナー球団の事業収支から払う体制を目指すとしているが、MLBのようにマイナー選手の年俸をトップリーグが負担することも考えられる。その場合でも育成費用やマイナーの試合、運営費用は、マイナー球団が負担する。

日本には1万人規模を収容する球場がたくさんある。新たな投資をしなくても、マイナー球団のインフラは揃っているのだ。

2004年球界再編時に宮内オーナーが提唱した当初の「12球団+24球団」プランでは、二軍チームの下に三軍を設置するとし、これは地域の社会人チームなどを母体にするとしていたが、今は、独立リーグが存在する。三軍チームを、独立リーグを母体に再編成すれば、その設立はスムースだろう。

コスト削減以上のメリットもある

「12球団+24球団」プランのメリットは、NPBのコスト削減だけではない。24のマイナー球団を全国に配置することで「地域共生型」の新たなビジネスモデルを構築することも期待できる。

現在のNPB球団も、本拠地周辺のエリアに濃厚なマーケティングをかけることで、多くのリピーターを獲得している。しかし、これらは単に「マーケットを絞ってリピーター戦略を仕掛けている」だけであって、地域と共生しているわけではない。

中にはDeNAや西武、ソフトバンク、日本ハムのように、地域で野球の普及活動をしたり、「○○町デー」のように、特定市町村のファンサービスを行っている球団はあるが、それでも球団は地域のコミュニティに積極的に参加しているともいえないのだ。

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