例えば本拠地球場や練習施設を市民のために開放したり、選手がボランティア活動に日常的に参加するなど、球団、選手が「地域の一員」となることで、地域と共生することができる。小さな経済規模であっても、地元の支援があればマイナー球団は自立することができる。
「野球離れ」が深刻化する中、特にプロ野球の本拠地がない地方では、野球に関心を持たない人が増加している。そういう「空白地帯」に野球ファンを根付かせるためにも、地域共生型のプロ野球チームは有効だ。
実は独立リーグ球団は、地域と密着することで小規模ながらここまで存続してきた。独立リーグ球団を三軍にすることでそのノウハウを取り込むことができる。
新型コロナ禍で、独立リーグは、チームだけでなくリーグそのものが存続の危機に瀕している。おそらくこのまま何もしなければ、独立リーグそのものが消滅するだろう。
その前に、NPBが手を差し伸べる必要がある。そういう意味でも「12球団+24球団」プランは有意義だ。
この構想は、以前、このコラムで紹介した小林至氏(元ロッテ投手、現桜美林大学教授)の著書『プロ野球ビジネスのダイバーシティ戦略 改革は辺境から。地域化と多様化と独立リーグと』(PHP研究所)の構想とよく似ている。
小林氏も「プロ野球の次の一手」は、マイナーリーグの独立採算、地域密着だと見ていたのだ(参考記事:『プロ野球人気の陰で「独立リーグ」の厳しい現実』)。
日本のプロ野球をどうするのかの議論も重要
さらに言えば、「12球団+24球団」プランは、Jリーグの「100年構想」にも通じる部分がある。「100年構想」では、地域の市民がだれでも利用できるスポーツ施設を各地に創設し、その中にJリーグクラブがあるという考え方だった。「地域と共に生きるプロスポーツ」が前提なのだ。
新型コロナウイルス対策では、JリーグとNPBが連携したが、今回の事業展開でもコラボレーションすることも考えられる。
こうした議論は、コロナ禍が終息する前からスタートさせる必要があるだろう。
プロ野球も、このままいけば、新型コロナ終息までに存続が難しくなる球団が出てくる可能性がある。
NPBの斉藤惇コミッショナーは2018年、「うまくいっているので、エクスパンションをする考えはない」と言ったが、そういう事態ではなくなる。
何も動きがなければ、単に1リーグ10球団、8球団など縮小するだけの「球界再編」に終わる可能性もある。それは日本野球の「終わりの始まり」ではないかと思われる。
その前に「日本野球をどうするのか」という大きな視点にたっての議論が起こるべきだと考える。各球団は、自己の利益だけでなく「野球の存続」を前提にした取り組みを模索する必要があるだろう。
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