プロ野球人気の陰で「独立リーグ」の厳しい現実 野球の未来のためNPBとの連携は重要だ

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NPBは今季、2653万人を動員。シーズン観客数の記録を更新した。しかしスタジアムが満員になるのは本拠地球場だけだ。

広島は今、最も観戦チケットが取りにくいチームの一つだが、5月21日、今季1試合だけ行われたみよし運動公園野球場での公式戦は、1万3836人、動員率は86%だった。また巨人は、今季、鹿児島、熊本、岐阜、新潟、前橋で各1試合行ったが、5球場での主催試合の平均動員率は74.8%だった。

かつては、地方球場の試合は早くからチケットが売り切れ、立ち見が出るのが当たり前だったが、今は満員にならなくなっている。NPB球団は、客足が伸びないので地方での試合から撤退しつつある。

NPB各球団が、本拠地周辺でしか集客が見込めない中で、独立リーグは微力ながらも各地域で野球ファンのつなぎ止めに、尽力してきたのだ。

しかし、独立リーグの頑張りも、そろそろ限界が近そうだ。地域の人口は減少しているし、地方の野球ファンも増えていない。観客数は伸びない、むしろ減少している。地域経済も疲弊し、スポンサー企業を探すのも難しくなっている。

スポーツの「地産地消」こそが未来を拓く

折しも、『プロ野球ビジネスのダイバーシティ戦略 改革は辺境から。地域化と多様化と独立リーグと』(PHP研究所)が2019年8月末に発売された。

小林至教授の近著。「プロ野球ビジネスのダイバーシティ戦略 改革は辺境から。地域化と多様化と独立リーグと」(PHP研究所)

著者は小林至江戸川大学教授。小林氏は、プロ野球4人目の東大卒投手としてロッテに入団。退団後は、渡米してMBAを取得。2005年からは福岡ソフトバンクホークスのマーケティング担当取締役として、現在のNPB球団の地域密着型のマーケティングを基軸とするビジネスモデルの確立に尽力した。また育成選手枠の創設にも参画した。

小林氏は、スポーツの「地産地消」こそが未来を拓くと訴え、日本の独立リーグの取り組みを評価する。しかし、アメリカの独立リーグがMLBのひざ元にありながら経営が成り立っているのに対し、日本の独立リーグは経営基盤の確立に苦労している。

これはなぜなのか?

小林氏は、日本に野球観戦文化が根付いていないことと、独立リーグが果たしている地域貢献や人材育成、供給などの功績が、正当に評価されていないことを指摘する。そして、独立リーグはNPBの育成組織として生きていくべきだと訴える。

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