プロ野球人気の陰で「独立リーグ」の厳しい現実 野球の未来のためNPBとの連携は重要だ

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BCリーグ運営会社の村山哲二社長とグランドチャンピオンシップの表彰式のあと言葉をかわしたが「福井を引き継いでくれる企業を探している。手応えはある」と話した。村山氏はこれまで、こうした危機を何度も乗り越えてきただけに、冷静だった。

2019年独立リーググランドチャンピオンシップ表彰式。記念写真に収まる村山哲二BCリーグ社長(筆者撮影)

ここ1年でも、独立リーグ球団経営に関しては、いくつもの変化があった。

2018年11月には福島レッドホープスが経営危機に瀕し、岩村明憲監督が社長を務める新会社に経営が引き継がれた。

3月には高知ファイティングドッグスの運営会社が変わった。

また、徳島は資金集めのためにクラウドファンディングを実施した。

四国4球団、BC11球団のほとんどは「ぎりぎりのライン」で球団を維持している。リーグ加盟球団が減ることは、1球団だけの問題ではなく、同様の境遇にある球団の脱退を誘引するおそれさえある。

四国アイランドリーグは創設以来15年、BCリーグは13年。独立リーグは地域スポーツの振興、そして人材育成で着実な成果を残してきた。東京など大都市圏に人口、経済の一極集中が進む中で、地方は少子高齢化が進み衰退している。

2005年、発足当時の四国アイランドリーグ試合風景(筆者撮影)

そんな中で独立リーグ球団は「おらがチーム」として地域コミュニティーの醸成に貢献している。

現・四国アイランドリーグplusの坂口裕昭理事長は徳島の社長時代に「独立リーグ選手は野球50%、地域貢献50%ではなく、野球も地域貢献も100%だ」と語ったが、15球団ともに幼稚園、保育所、老人介護施設などの慰問や、清掃活動などで地域と深く結び付いている。

今季からBCリーグに加盟した茨城の山根将大社長は、「東日本大震災で被災した茨城県を元気づけるために新球団を設立した」と語った。最近は、野球を引退した選手を「人材」として地域企業に仲介することも行っている。

独立リーグは社会人野球を補完する役割もあった

NPBへの人材供給源としても、独立リーグは一定の役割を果たしている。今年のドラフト会議でも独立リーグから3選手が西武に支配下で指名され、育成で各球団から計5選手が指名された。

これまで、ロッテの角中勝也、中日の又吉克樹などNPBで活躍する人材を輩出したほか、NPBチームの指導者や選手を「出向」という形で受け入れている。またNPB球団の退団者の受け入れ先としても機能している。NPBのファーム(2軍)との交流戦もすっかり定着した。

一方で、社会人野球は大きく様相が変わっている。JABA(日本野球連盟)の資料によれば、企業が社員として選手を雇用するいわゆる「企業チーム」は、1998年には142あったが、2018年には95に減っている。そして企業の後ろ盾がない「クラブチーム」は201から261に増えた。

社会人野球の経済基盤は、近年、非常に不安定になっている。そんな中で独立リーグは、曲がりなりにも「野球を仕事にするチーム」として、社会人野球を補完する役割を果たしてきたのだ。

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