1カ月で結婚、44歳女性が放った「会心の一手」 まだ手もつないでいない段階での決断

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古い日本映画だけでなく現代のアイドルグループのファンでもある圭一さんはリアルな恋愛に積極的なほうではない。何度か2人で映画を見たり花見をしたりもしたが、交際に発展する様子は見られなかった。そこで恭子さんが勝負に出る。

「事故に遭った母が入院中だったので彼が見舞いに来てくれることになったんです。『お母さんにあいさつする』と言うので、『お嬢さんをください的なあいさつですか?』と半分冗談でぶっこんでみました。彼の返事は『まあ、そんな感じ』。まだ手もつないでいないのに……」

恭子さんは攻撃の手を緩めかった。「結婚はいつするの?」と聞いたところ、「いつでもいい」と返す圭一さんに具体的な日時を提示したのだ。

「『いつでもいい』だと『いつでもない』になってしまう、と思ったからです。定食屋での初デートが3月25日だったので、4月25日でどう?と聞きました」

時はすでに4月半ばであり、圭一さんに逡巡する余地はない。恭子さんはすぐに婚姻届を持ってきた。なお、圭一さんの親からも「反対する理由がない」と賛成してもらった。幸せなスピード婚である。

「44歳だったので、子どものことは諦めていたんです。不妊治療をする気力もお金もないと彼に伝えたら、『妹夫婦に子どもがいるので問題ない』と言ってくれました」

ところが、結婚した1カ月後に恭子さんは妊娠する。あまりの急展開に恭子さんは戸惑いを覚えたが、もともと子ども好きな圭一さんは喜んでくれた。

「2年前に他界した父に孫の顔を見せられたし、父と夫は病室で将棋をさしたりしていました。親孝行ができたと思います」

40代の自分だから得られた、現在の幸せな生活

今では独自のギャグを言うようになった娘が「めちゃくちゃ」かわいくて、トランプやクロスワードパズルを一緒にできる夫との生活も心地よい。「こんなに楽しいならもっと早く結婚しておけばよかった」と恭子さんは胸の内を明かすが、「20代30代で結婚していたら今ごろ離婚していたかもしれない」とも自己分析する。

「夫は朝が苦手なので休みの日はなかなか起きてきません。やってくれる家事は洗いものとお風呂掃除ぐらいです。独身時代は年間200本以上の映画を映画館で見ていました。それも今ではできませんが、40代の自分なら我慢できます」

成熟とは、経験を通して客観性を身に付けていくことだと思う。客観性があれば、「人はすべての喜びを同時に得ることはできないけれど、それでも十分に幸せに暮らせる」とわかってくるのだ。感謝の気持ちとともに。

両親との暮らしや映画鑑賞の代わりに、夫と娘という自分の家族を得た恭子さん。現在の生活に満足しているように見えた。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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