1カ月で結婚、44歳女性が放った「会心の一手」 まだ手もつないでいない段階での決断

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介護が必要な両親との暮らしに不満はなく、仕事も遊びも充実していた。類は友を呼ぶ。恭子さんの周囲には独身者が多く、同世代の半分以上は今でも結婚していない。

そんな恭子さんが結婚願望を強めるきっかけは、失礼ながらありきたりなものだった。大好きな母親が事故に遭い、「親がいなくなってしまうかも」という危機感を覚えたのだ。幸いなことに命に別状はなかったが、両親がいなくなって1人きりになった自分の姿を恭子さんは想像した。

「ヤバい。私がかわいそう!と思いました。その頃、友達のFacebookで、『結婚する相手に求める3つの条件を周囲に話していたら紹介してもらって結婚できた』という話を読んだんです。私も同じことをやってみようと10人ぐらいの友達に声をかけました」

それまで結婚願望が薄かった恭子さんは「3つの条件」が思い浮かばなかった。条件を考えたこともなかったので当然である。そこで、友人たちとの会話を通して、自分は結婚する相手に何を求めているのかを明確にしていった。

「私は雑誌『Olive』を熱心に読んで育ったオリーブ少女です。AMラジオや映画など、サブカルチャーが好きな人と一緒にいたい。あと、納豆や漬物が大嫌いで、少なくとも家に置きたくはありません。それでも平気な人がいいです。イケメンでなくてもいいけれど、清潔感がない外見をしている人とは一緒に歩きたくありません」

サブカル好きが集まる名画座で夫と出会う

1つ目と2つ目の条件はかなり独特であり、出会いの幅を狭めることになりかねない。恭子さんが賢かったのは、1つ目の条件は楽々とクリアしている人たちが集まる場に行ったことだ。

「以前から通っていた名画座です。回数券を買えば2本立てを安く見られるので、休日はひたすらその映画館にいました。通っているうちに友達ができて、3つの条件の話もしていたんです」

映画館仲間は20代から50代までの十数人。既婚者も独身者もいる。都会に住んでいる人からすれば「同じ映画館が好きな程度で友達になれるの?」と疑問に思うかもしれないが、同じく三河地方で住み暮らしている筆者は恭子さんに共感する。都会に比べるとサブカル系の情報を得られる場は少なくて、そこに集う人たちは限られている。いつも同じようなメンバーだと自然と顔見知りになり、お店のスタッフやイベントなどを通じて親しくなりやすいのだ。

その仲間で岐阜県の映画館に遊びに行った帰り道、恭子さんと圭一さんは2人きりになった。圭一さんも実家暮らしで、お互いの家は車で5分程度の距離にあるのだ。

「彼の同級生がやっている定食屋さんの話になり、日を改めて2人で食事に行ったのが3月25日です。母が事故に遭ってから1カ月後のことでした」

婚活のプロフィールで「趣味は映画観賞」と書く人は少なくないが、好きな作品の傾向が同じでないと趣味が一致するとは言いがたい。例えば、『るろうに剣心』と『女囚さそり』では観客の層が異なる。映画館デートをしたら、お互いに幻滅することになりかねない。その点、恭子さんと圭一さんは同じ名画座の常連客同士なのでこの問題も起きなかった。

共通の友達が複数いるのも情報収集には大きなメリットだ。圭一さんをよく知る人によれば、彼が勤めているのは大企業ではないけれど地元では有名な優良企業。社員を大事にすることで知られている。なお、圭一さんには交際している女性もいないことがわかった。いずれも結婚相手として男性を見るには重要な要素である。

「私にとっては、企業名や収入よりもファッションセンスのほうが重要です。ユニクロや無印良品の服でもいいので、ちゃんと着ていてほしい。夫は小物もオシャレなので合格点です」

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