脱中国依存が進まない要因の1つには世界最大の約14億人という人口に裏打ちされた豊富な労働力がある。例えば、年間約2億台の出荷数を誇るアップルのiPhone生産やHPの約6000万台のパソコン製造を支える鴻海傘下のフォックスコンは中国に50万人を超える作業員を抱える。深圳にある最大の主力工場では繁忙期に日本の地方都市の人口と同規模の30万人弱が集まる。
供給される部品の製造などを含めればアップル製品の製造には中国の約300万人の労働者が関わっているとみられ、ほかに世界の電機企業がそれぞれ中国に数十万以上の製造人員を頼っている。
インドやベトナム、代替生産の可能性は?
中国と人口が同規模になったインドであれば労働力を集められるとの指摘もあるが、インドへの生産移転も簡単ではない。労働者の習熟度に差があるためだ。すでに鴻海もiPhoneの廉価版などをインドの拠点で製造しているが、アップルは最先端のiPhoneをインドで生産する検討をいったん取りやめたとみられる。
電子機器は高度化するほど小さい部品の取り扱いが増え、製造作業も精巧になる。工場の自動化が進んでも生産工程を熟知した製造現場のマネジャークラスは必要だ。インドでは熟練した作業員など人材が不足している。深圳にあるフォックスコンの工場幹部は「20年以上かけて構築した中国のサプライチェーンと同様の規模と技術水準を、ほかで築くのは無理だ」と話す。
代替生産地として注目が集まるベトナムの状況も脱中国依存の難しさを映す。2019年のベトナムの輸出額は前年比8.4%増の2461億ドルと過去最高を更新。他方、ジェトロが2018年に実施した調査によればベトナムに進出した日系企業の「原材料・部品の調達先」のうち、ベトナム現地の割合は36.3%。同年の中国での現地調達率は66.3%で、ベトナムの水準は中国と比べるとまだ低い。
コロナ禍は中国依存を脱する契機であることは確かだが、その先行きはなかなか見えてこない。
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