今回、電子機器から家電、住宅設備など幅広い分野でサプライチェーンの中国依存が、あらためてリスクとして顕在化した。こうした反省から、「脱中国」を進めるべきとの論調が一段と強まっている。
4月7日に政府が出した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」では「強靱な経済構造の構築」と称する項目に「サプライチェーン改革」が筆頭に上げられた。中国を念頭に「一国依存度が高い製品・部素材について生産拠点の国内回帰等を補助する」ほか、「ASEAN諸国等への生産設備の多元化を支援する」とされ、約2400億円の予算規模が盛り込まれた。
過去にもあった脱中国のきっかけ
そもそも日本では2010~2012年に起きた尖閣諸島問題で、中国によるレアアース禁輸や中国現地工場が破壊されるなどチャイナリスクに直面した。さらに2018年に追加関税を課すことで顕在化した米中貿易摩擦以降、中国外に生産拠点を移す動きがますます活発化。「チャイナ・プラス・ワン」を10年以上進めてきた。
リコーはアメリカ向けの複合機生産をタイに移管し、衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングはベトナムで縫製工場を増やすなど、各社が中国依存を下げようと試みてきた。世界でもアップルのスマートフォン「iPhone」や大手パソコンメーカーのHPやデル(DELL)の受託製造で知られ、中国に一大サプライチェーンを築き上げた台湾の鴻海精密工業もインドやアメリカにある生産拠点の拡充を続けている。
ところが、今回の新型コロナの感染拡大によって、脱中国の取り組みが十分に進んでいないことが、皮肉にも示された格好だ。アフターコロナを見据え、新たに過度な中国依存を見直す動きは出ているものの、政府の後押しがあっても中国依存を脱するのは容易ではない。
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