コロナが試す「人間性のテスト」で問われること 「過去」に学び、「水平思考」で攻めていく

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ラテラルシンキングとは物事を見る角度を変えて発想の確率を上げる思考法です。私が行う研修の中では視点移動を身に付けてもらうために「それはちょうどいい!」というエクササイズをやってもらいます。このエクササイズは数人のグループの中の1人を「社長役」とし、ほかの人は社員として以下のように社長に困難な状況を報告、社長が視点移動をして発想します。

例:「社長、大変です!オフィスビルが火事になり仕事が当面できません」
社長は「それはちょうどいい! ◯◯◯しよう!」とプラスに転じるアイデアを出します。
例:「それはちょうどいい! 社員全員テレワークにしよう!」
社員は「さすが社長!」とポンと手を打ち、「ついでにこうしてみてはいかがでしょう?」と補足していきます。
例:「ついでにコールセンターもリモート対応にしましょう!」
社長が困ってしまい、よいアイデアが出てこない場合は、部下が「それはつまり◯◯するということをおっしゃりたいのでは?」など助けてあげます。

この「それはちょうどいい!」エクササイズのポイントは問題そのものを解消する(例:火を消す)のではなく、あくまでもプラスに転じるアイデアを出すという点です。これは何を意味しているかというと、出来事はあくまでも出来事であり、問題かどうかは見方や解釈で決まるということです。出来事をあくまでも出来事として受け止め、出来事があったからこそ起こる未来に意識を集中させることが目的なのです。

「肯定的な見方をする」という考え方が必要

目の前で起きている出来事は、現時点での視点で見ればトラブルや問題と認識されますが、未来から見ればそれは1つのきっかけと認識できます。もちろんコロナ禍を「それはちょうどいい」と思うのは難しいことですが、コロナ禍を1つのきっかけとして、これまでのやり方を大きく変えていくことはできます。

「災い転じて福となす」ということわざがありますが、これは単に災いが過ぎ去ったらよい結果になっていたという受動的な意味ではなく、自分の身にふりかかった災難や失敗をうまく利用して、よりよい状態になるよう工夫するという能動的な意味です。

災いを福とするには、まずは「状況に対して肯定的な見方をする」という考え方が必要です。状況に対して、「ああ、最悪だ……」「困ったな……」「早くこの状況が変わらないかな……」と否定的に捉えるのではなく、まさに「それはちょうどいい!」と、思い切って肯定してみるのです。

前述の「それはちょうどいい!」という思考のエクササイズは、初めのうちは社長役の人は「え〜! それは困ったなあ……」となってしまい、なかなかよいアイデアが出てこないのですが、繰り返すうちにほかの人も「お〜!」と感嘆するようなアイデアが出てきます。このように発想の切り替えは訓練で身に付けることができるのです。思考は言葉で動き出します。無理やりでもまずは「それはちょうどいい!」と言ってみると、頭はちょうどよくなることを考え始めます。

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