閲覧データ「クッキー」の先を読む5つの注目点 メディアと広告の未来は規制でどう変わるか

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まず広告主には、「D2C(Direct to Consumer )」の手法にシフトすることで、自社広告の効果を自らより高めていくという視点が求められます。デジタル広告のエコシステムに依存しすぎることなく、自ら0パーティデータや1stパーティデータ(ユーザーが訪問するWEBサイトが直接取得する個人データ。ファーストパーティクッキー、購買履歴、検索履歴などを含む)を取得することによって、プライバシーを保護しながらユーザーとの「継続的で良好な関係性」を構築・強化していく。そのためには、商品・サービスがユーザーにとって有益であるのはもちろんですが、広告主自身がメディアとして魅力的なコンテンツをユーザーへ提供していくという姿勢が重要です。

次にパブリッシャー(メディア)には、ニュースなどコンテンツの価値をより高めていくことが求められます。広告ビジネスモデルへの依存を減らし、メディアとしての価値を高めることをコンテンツ課金や有料契約を中心とするビジネスモデルへのシフトへつなげていく。そして、価値のあるコンテンツ提供の対価として、プライバシー保護に留意しながらマーケティング資産としての個人データを蓄積・解析することで、変化するデジタル広告業界で確固たる地位を築くという姿勢です。やはり、パブリッシャーにも、ユーザーとの「継続的で良好な関係性」の視点が必要不可欠です。

「自らメディアになる」という発想

では、代理店やアドテック・ベンダーなどを含む広告仲介会社はどうでしょうか。サードパーティクッキーの利活用が制限され、「0パーティデータ」「1stパーティデータ」がより重視されることを考えると、仲介者がデジタル広告の世界で生き残っていくためには、魅力的なコンテンツをユーザーに提供していくこと、もっと言えば、自らメディアになるという発想が求められるのではないかと考えます。

デジタル広告のエコシステムからサードパーティクッキーが締め出される中で、BtoB領域の「コンセントマネジメント」、およびBtoC領域のブラウザ「ブレイブ」といったプライバシー・テックが支持を拡大しています。

『2025年のデジタル資本主義: 「データの時代」から「プライバシーの時代」へ』(NHK出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

コンセントマネジメントとは、企業がユーザーの個人データの活用に際して同意を取得することや、アクセスを許可する個人データの内容やそのレベルをユーザー自らが選択・設定するシステムやプロセス、そのほかデータへのアクセスや削除、データ・ポータビリティなどGDPRやCCPAが定める個人情報やプライバシー保護にかかわる規則に対応するためのソリューション全般を指しています。事業者がユーザーから直接同意を得る、「0パーティデータ」を収集することでプライバシー保護とブランド・ロイヤルティが両立します。

「ブレイブ」では、広告主が支払う広告料はパブリッシャーだけでなくユーザーともシェアされる仕組みになっています。両者に共通するのは、D2Cの考え方、そしてその前提として商品・サービスなど提供するコンテンツに高い価値が認められなければならないということではないかと思います。

広告主、パブリッシャー、広告仲介会社ともに、今後、そういった視点が求められてくるでしょう。筆者は、それこそがメディアと広告の新しい関係性であり、来たるべき未来ではないかと考えています。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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