閲覧データ「クッキー」の先を読む5つの注目点 メディアと広告の未来は規制でどう変わるか

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正式名称は「Cookie」。ユーザーがいつ、どのサイトを見たのかといった閲覧履歴やパスワード・IDなどログインに関するデータを一時的に保管する仕組みや、ユーザーのブラウザと閲覧サイトのドメインの間でそのようなデータをやり取りする仕組みのことを指しています。

クッキーはユーザーがアクセスしたサイトからユーザーのブラウザに送られ、保存されます。クッキーの語源になったのは、「マジッククッキー」です。中に秘密のメッセージが入ったクッキーを「フォーチュンクッキー」といいますが、同様に、秘密のメッセージをやり取りする役割をクッキーは担っている、ということです。

クッキーには、大きく2つの利用法があります。1つはユーザーの利便性向上です。例えば、一度訪れたサイトでIDやパスワードの入力を省略できるのは、クッキーのおかげです。もう1つが広告です。クッキーをもとにユーザーの価値観や性格、行動パターン、趣味などを推測することで、最適化された広告を配信できるのです。

クッキーには2種類ある

しかも、あるサイトで自転車を検索したあと別のサイトに移動したらそこでも自転車の広告が表示された、といったことも起こります。こんなことが起こるのは、クッキーが2種類あるためです。

1つは、ユーザーが訪問したサイトのドメインから発行される「ファーストパーティクッキー」です。これは、そのサイト内でのみ、使用できるものです。もう1つは、ユーザーが訪問したサイトとは別のドメインから発行されるクッキー、通称「サードパーティクッキー」です。サードパーティクッキーは複数のサイト間で共有することができるため、そこから、複数のサイトにまたがったユーザーの行動や興味をデータとして収集し、より精度の高い広告につなげることができます。

以上の話を聞く限りでは、クッキーの利用にはメリットのほうが多いようにも感じられるかもしれません。クッキーのおかげで個人は興味のない広告を見ずに済み、広告主はムダな広告を減らせるのですから。

しかしクッキー規制とはその名のとおり、クッキーの利用に制限をかけようとするものです。それはなぜか。クッキーの利用が個人の特定につながる危険、つまり、プライバシーが侵害される危険をはらんでいるからです。

訪問したウェブサイトで広告バナーが表示される時や、その広告をクリックした時、ユーザーが使っているブラウザは、広告配信サーバーから発行されたサードパーティクッキーを受け取っています。広告会社は、サードパーティクッキーを発行することでユーザーのネット上の行動を勝手に追跡(トラッキング)しているのです。そのことをユーザーが意識することはまずありません。クッキー自体は氏名や住所を含んでおらず、広告業者も、そこから年齢層や興味などを推定し、ユーザーの趣味や嗜好にマッチしそうな広告の配信に利用するのみであり、個人を特定するものではありません。

次ページ現実にはクッキーと他のデータを突合すれば個人は特定できる
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