閲覧データ「クッキー」の先を読む5つの注目点 メディアと広告の未来は規制でどう変わるか

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第3に、技術上、ユーザーのブラウザレベルでトラッキング認定されるクッキーを無効化するトラッキング防止が浸透することから、デジタル広告のエコシステムからサードパーティクッキーが締め出されます。アップル「サファリ」や「ファイヤーフォックス」には既にトラッキング防止機能が備えられています。グーグル「クローム」も2年以内のクッキー規制を表明しています。事業者が、法令上だけでなく、技術的かつ自主的にもクッキーを使用しない動きにあるわけです。

以上のことから第4に、ファーストパーティクッキーや0パーティデータ(ユーザーが訪問するWEBサイトが個人データの取得、利用、取扱いについて、ユーザーから明確な同意を得たデータ)が重視されます。企業にはユーザーとの「継続的で良好な関係性」が求められ、またそれによってメディアと広告の関係にも変化が生じるでしょう。

そして第5に、サードパーティクッキーを使用したトラッキングとは異なる手法がデジタル広告に使用されるようになります。例えば、非営利団体「デジトラスト」加盟のアドテック・ベンダーなどの事業者が共通のユーザーIDを使用してユーザーを識別する「共通IDソリューション」、入札の仕組みに頼らないプライベートマーケットプレイス(PMP)での広告取引などです。さらには、新しい価値観で支持を伸ばすブラウザ「ブレイブ」、グーグルが2019年8月に構想を打ち出したプライバシーを強化するオープンなエコシステム「プライバシーサンドボックス」にも注目する必要があるでしょう。

法律の解釈や適用、アドテック・ベンダー業界の動きなど依然不確かな側面は残っていますが、「結局、クッキーはどうなるのか」に関して、以上の5つのポイントからプライバシー保護とデジタル広告市場を見ていく必要があるでしょう。

メディアと広告の未来

デジタル広告のあり方が大きく変化しています。ますます、サードパーティクッキーの利活用が法的にも技術的にも制限されていきます。そうすると、従来型のデジタル広告のエコシステムではマッチングの精度が落ち、広告が本来届けられるべきユーザーに届かず、届けられるべきでないユーザーへは不自然な広告が届いてしまうといったことが増えてくるでしょう。

そこで、そのエコシステムを構成してきた広告主、パブリッシャー(メディア)、代理店やアドテック・ベンダーなども含む広告仲介会社の3者それぞれと広告との関係性はどのようになっていくのでしょうか。

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