コロナから回復後も気が抜けない患者の現実 ニューヨークで訪問看護師が挑む退院後ケア

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これまでに退院した患者のうち、多くは脚部の血栓、筋萎縮、疼痛、倦怠感、心臓の問題、呼吸器系の苦しさの継続に悩まされている。

カーニー医師によれば、挿管処置を受けた患者の場合は、退院後もこうした症状が深刻に見られる。また、長期にわたる鎮静状態による影響、すなわち「集中治療後症候群」と呼ばれる症状と思われる認知障害を示す患者も多いという。

今週、ノースウェルが運営する病院を退院した感染患者の数は6600人を超えたため、同社ではさらに多くの訪問看護師を雇用することを検討している。また遠隔診療サービスの拡大や、退院患者の収容に向けた地元の経験豊富な介護施設との提携もありうるとカーニー医師は言う。

微笑みと落ち着き

アジャイさんは患者の自宅で、患者本人やその家族からの山のような質問に答える。食料品店にどれくらいの頻度で行くべきか、血圧を自分で測定するにはどうすればいいのか。

彼女は聴診器を使い、体液蓄積の兆候がないか患者の呼吸音を確認する。患者とその家族に、洗面用具を共用しないよう、ドアの把手や電灯のスイッチを消毒するよう念を押す。

冷蔵庫をチェックし、空であれば、慈善団体による食品配達を頼むという手段を提案することもある。横になっていると呼吸が苦しくなるので椅子にもたれて寝ていることが分かれば、もっと酸素供給が必要だと医師に伝える。

アジャイさんが担当するCOVID-19確定患者5人は、自宅に戻ってからゆっくりと着実な回復を示しており、再入院が必要となった患者は1人もいない。

アジャイさんは、患者の近くにいるときは二重のマスクとフェイスシールドを絶対に外さない。だが、彼女が微笑んでいることは、シルバーのアイシャドウを施した目の周りに浮かぶ皺で分かるし、彼女の落ち着いた声は安心感を与えてくれる。

「世の中は大騒ぎだが、患者のために平静さを保っている」とアジャイさんは言う。「怖がっているのは患者も私たちも同じだ。でも、私たちには平静さを保つことができる」

(Gabriella Borter、翻訳:エァクレーレン)

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