コロナから回復後も気が抜けない患者の現実 ニューヨークで訪問看護師が挑む退院後ケア
手指消毒用の除菌ローションのボトルを手に、ゆとりのある青いガウンを羽織ったアジャイさんはポーチの階段を上り、ドアのベルを鳴らす。ドアにはウサギの形のボードが掛かり、「ハッピーイースター」と書かれている。
患者の夫がサージカルマスクを着けた姿でドアを開け、アジャイさんに親しげに手を振って挨拶する。アジャイさんを室内に招き入れるときも、数フィート離れたままだ。
アジャイさんがこの患者に会うのは、退院してから初めてだった。患者の咳は数日前に電話したときよりはかなり良くなっている。アジャイさんによれば、このときは何かを言い終える前に咳き込んでしまうほどだった。
退院したCOVID-19患者が3日にわたって無症状を報告するまでは、アジャイさんも自身が感染するリスクを抑えるため、遠隔診療だけを行う。
「治療の一端を担い、患者を指導し、回復の力になれることが嬉しい」と彼女は言う。「それだけでやり甲斐になる」
それでもアジャイさんは、自分が患者の家から自宅にウィルスを持ち帰ってしまうのではないかと心配している。共に暮らすのは、23歳の息子と、彼女自身の妹だ。アジャイさんは家でもマスクを着用し、感染を防ぐため家族から6フィートの距離を保とうと心がけている。自分が愛する仕事のために払っている犠牲だ。
回復支援、なお未知の領域
アジャイさんが所属するのは、23の病院を擁する州内最大の医療事業者ノースウェル・ヘルスである。
ノースウェルでポストアキュート(急性期治療後)医療担当ディレクターを務めるマリア・カーニー医師は、入院していた患者が罹患前の生活の質を取り戻せるとしても、ほとんどすべての場合、退院後には何らかの医学的なフォローアップやリハビリテーションが必要になるだろう、と話す。
「私たちはまさに未知の領域に入りつつある。患者が今まさに何を必要としているか分からず、身体的にも精神的にもひどく弱っているのが分かるというだけだ」とカーニー医師は言う。「私たちの医療システムが回復の次のフェーズにどのように取り組めるのか。それが課題になっていくだろう」