ソニー、マッキンゼー、DeNAで学んだこと 森本作也×瀧本哲史 対談(前編)

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DeNAに入った理由

瀧本:まさに映画「マイノリティ・リポート」の世界ですね。

森本:そうそう。ずっと「マイノリティ・リポート」と言われましたね。

瀧本:カネスタってメンバーが面白いですね。トップは学位コレクター。

森本:よく知ってますね。僕らはいつもCEOのJim Spareを紹介するのに、「MITで5つの学位を持っていた」といいます。インド出身だけどフランスで教育を受けているので、ヒンズー語よりフランス語のほうが得意。それで英語とフランス語がしゃべれる。原子構造もコンピュータサイエンスも半導体も全部わかる。その人がそのカネスタの(バーチャルキーボードの)原理を開発して、光と半導体を使って距離を知るというコンセプトを組んだ。

それでMITで同級生だった人が社長になり、スパイラスの同級生だったナジムという人が社長になった。それから今度はナジムとスタンフォードで同級生だったアッバスという人がソフトエンジニアになって、この3人が会社をつくった。中近東、イスラム系のトップを筆頭に、メンバーの出身国を数えると15カ国ぐらいになっちゃうような、ダイバーシティなメンバーでした。

それでカネスタがマイクロソフトに買収されてからは、自社で開発するから、僕のような人間はほかの部署に回ることになった。ほかの部署にいてもしょうがないから辞めたのですけど。

瀧本:それでカネスタを出られて、次に期間は短かかったけれど、DeNAに入られた。

森本:DeNAに入ろうと思ったのは、当時の社長の南場智子さんから誘われたこともありますが、ネット系の会社に入ってみようと思ったのが理由のひとつですね。

たぶん僕の経歴は、半導体の営業とかマーケティングにぴったりなんですよ。でも、また同じことをしても仕方ない。僕は技術者じゃないから、ハードウエアを自分でつくるのは難しい。シリコンバレーの半導体の会社のトップは全員Ph.Dですから、僕がトップになることはありえない。だとすれば自分でつくれるようなサービスアプリの会社のほうが、自分の幅が広がると思ったのがDeNAに入った動機です。

瀧本:わりと森本さんは、よりチャレンジングで幅が広がるほうへ進むという選択をしていますね。

森本:そうですね。僕、リスクを取って後悔したことがないんですよ。その場、その場ですごく取ってるとは思うけれど、失敗した記憶がない。まあ、何を失敗と言うのかにもよるけれど。取ったリスクはその分返ってくる、というのが僕の実感ですね。

今のソニーについて思うこと

瀧本:逆に言うとソニーはリスクを取れなくなった結果、今のようになっているのかなという感じがしますね。

森本:それはよく言われている話ですよね。ソニーで成功した先輩を見ていると、言っちゃ悪いけど、ほかで使えなかった人だという印象があります。だからこそあれだけ思い切ったことができたんじゃないのかな。もちろんたぐいまれなる技術者がいて、技術はきちんと押さえるけれど、発想としてはすごくぶっ飛んでいて、ほかでは誰もやらないことばかりですよ。

瀧本:しかしソニーって打率が低いホームランバッターだったのに、なんだか急に二塁打とか狙い始めて、そこはみんなが狙うから勝てないという会社になった。

森本:そうですね。走攻守そろった人はいっぱいいますから。

瀧本:でも最近、ちょっとまた変わってきた気がしないでもない。

森本:ああ、そんな気もしますね。まだ友達が残っているので話を聞くと、なんだか振り切る力が出てきたと。まだ昔ほどふり幅が大きくないけれど、雰囲気は出てきたと言っています。

(構成:長山清子、撮影:尾形文繁)

※ 後編は7月25日に掲載します。

瀧本 哲史 エンジェル投資家

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たきもと てつふみ

京都大学客員准教授、エンジェル投資家。東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼーに入社。3年で独立し、日本交通の経営再建などを手がける。その後、エンジェル投資家として活動しながら、京都大学では「交渉論」「意思決定論」「起業論」の授業を担当し人気講義に。「ディベート甲子園」を主催する全国教室ディベート連盟事務局。著著に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』がある。

【2019年8月16日18時00分編集部追記】2019年8月10日、瀧本哲史さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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