瀧本:スタンフォードでは、何か変化がありましたか?
森本:いちばん面白かったのは、シリコンバレーの雰囲気に触れたことですね。いきなり知らない同士から会社が生まれて、そこにおカネが集まるスピード感。そうこうするうち、サンとか、シスコが急に盛り上がってきた。サンもシスコもスタンフォードのOBがやっていて、彼らが会社の説明をしてくれたとき、今まさに新しい産業が生まれるという雰囲気があった。ビジネスをやるならここが面白いとたたき込まれたわけです。そのときは個人的な理由で日本に帰りましたが、いつかはシリコンバレーに戻りたいと思っていました。
瀧本:留学は自費ですか?
森本:基本的にはそうです。サウジアラビアもドバイも所得税が安く、生活費も安いから、手取りをほとんど貯金に回せた。3年間で授業料が貯まりました。
留学したいと言ったら、ソニーは休職扱いで行かせてくれましたが、結局、僕は留学後、ソニーを辞めてマッキンゼーに入った。それなのにその後、マッキンゼーを退社するときに、ソニーから再びオファーがあったのです。そのオファーをくれた人事部長は、僕が新卒のときに呼んでくれた人だった(笑)。すごく心が動きましたが、今度はまったく違うことをやってみようと、シリコンバレーのベンチャーに移ったのです。
マッキンゼーの社風
瀧本:その前は、なぜマッキンゼーだったのですか?
森本:僕は中近東で営業をやっていた人間だから、企業戦略なんて何も知りませんでした。それでスタンフォードのビジネススクールで、戦略のまね事を学んでみた。だけど別に自分で戦略をつくったわけじゃない。だから学んだことを実際の世の中で経験してみたいと思った。戦略を実践できるところとしては、マッキンゼーがいちばんだろうと。同じコンサルティング会社でも、マッキンゼーとBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)では雰囲気がずいぶん違っていて、マッキンゼーには求道者みたいなまじめな人が多かった。僕はあまりそういうタイプではなく、コツコツやるよりノリでやるタイプ。どうせ道を変えるなら、自分にないものを得られるところがいいと思ったので。
瀧本:僕もマッキンゼーの出身ですが、社風はそのとおりですね。僕はBCGとはお互いに合わなかった。
森本:僕はBCGのほうが、馬が合うなと思いました。だからこそ、そこに行って得られるものはあまり多くないと。
瀧本:マッキンゼーは予想どおりでしたか。
森本:インターンをしてから入社しましたから、違和感はありませんでした。やっぱり徹底的にギリギリと考える。チャートの書き方や、偉い人との議論、ポイントをつかむスキルなどが、のちのベンチャー時代に間違いなく生きています。英語力では負けるけれど、議論では負けませんね。
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