自粛中の今こそ「遺言書」を記すべき納得の理由

大切な人を"争族"に巻き込まない50代の鉄則

とりあえず、指定された日に長兄の家に行きました。そこで義兄2人の口から出たのは、「早く済ませてくれ」でした。歳をとると一般的に気が短くなる傾向がありますが、まさにそれのようでした。

「済ませることは早く済ませないと、落ち着かないんだよ」

そして財産の分け方については、「法定相続分というものがあるんだから、そのとおりにしなくちゃいかんだろう」と言うのです。本当は、相続人全員が同意すれば、相続人の間でどのような分け方をしても構いません。この場合は、先行き長い晴美さんのために、全財産を晴美さんが相続して、兄2人は何ももらわない、という選択肢もあります。

ところが、そこは兄たちが譲らなかったのです。「われわれは年金生活者なんだよ。あんたはまだ若いから、これからいくらだって稼げるだろう。そう欲をかくもんじゃないよ」「そうそう、まだ若いからこの先、再婚ってこともあるだろうし。ここは良介の財産は良介の親族として、きちんと分けておいてもらわないと、キリがつかないじゃないか」

晴美さんは悲しくて悔しくて、胸がかきむしられる思いでした。大切な良介さんをふいに失って、まだ数カ月。泣いて過ごす日々なのに、再婚とか、欲をかくとか、なぜそんなことを言われなくてはならないのか。

良介さんの相続財産は、自宅マンションと預貯金、死亡退職金くらいです。預貯金は、共働きの夫婦であったため、月々二人で出し合った生活費から、余ったものを貯金してきた結果の産物の2000万円でした。

短気な義兄たちから結論を急がされた晴美さんは、彼らと口をきく気力を失い、とうとう法定相続分で財産を分ける遺産分割協議書にサインすることにしました。その結果、晴美さんは、二人で頑張って貯めた預貯金から、義兄たちの口座へ500万円ずつ振り込み、この不快な義兄たちから解放されることになりました。

お子さんのいないご夫婦の場合、自分が死んだあと、兄弟に財産をあげたい、と思うより、配偶者に残したい、と思う方が一般的かと思います。そして、歳の開いた相続人同士の話し合いとなると、どうしても年下の者が不利になったり、また、血のつながっていない相続人同士の話し合いでは、受けなくてもよい傷を負ってしまうこともあります。

晴美さんにこんな思いをさせないために、良介さんはどうしておけばよかったのでしょう? 有力な解決策はあるのでしょうか。

子どものいない夫婦には遺言が必須

良介さんや晴美さんのように、お子さんのいないご夫婦の場合、お互いに遺言書を作成することで、残された配偶者を守ることができます。その遺言は、とてもシンプル。お互いに「全財産を妻へ」「全財産を夫へ」と書き合っておくのです。

故人の兄弟姉妹には「遺留分」の権利がありません。遺留分とは、相続人の生活保障などのために認められた、相続財産の最低限の取り分です。この遺留分は配偶者・子・親までは認められていますが、兄弟姉妹については故人との関係性が薄くなるために、認められていないのです。

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