「考える力が弱い人」には"枠組み"が欠けている

「自分の頭で考えること」の本当の意味

人間はそれぞれ顔が違うように、異なった価値観や人生観を持って生きています。つまり、人間はそれぞれの価値観や人生観という色眼鏡をかけて世界を見ているのです。したがって世界をフラットに見るためには方法論(思考の枠組み)が必要です。

僕は、タテ・ヨコ・算数という3つの枠組みを提唱しています。

「タテ」は、昔の人の考え方を知ることです。人間の脳は、この1万年ほどまったく進化していないといわれていますから、弥生人と私たちの喜怒哀楽や判断力は同じです。だから昔の人の考え方が参考になるのです。

「ヨコ」は、いうまでもなく世界の人のことです。ホモ・サピエンスは単一種で、黒人や白人といった違いは単に気候の差から生じたものにすぎないことが遺伝子分析等から明らかになっています。

たとえば僕は学校で源頼朝は平(北条)政子と結婚して鎌倉幕府を開いたと習ったので、日本の伝統は夫婦別姓であることがわかります。世界を見ると、先進国クラブであるOECD37カ国の中で法律婚の条件として夫婦同姓を強制している国は(わが国を除いて)皆無です。

この2つの事実を知れば、「夫婦別姓のような考え方は日本の伝統ではない」、あるいは、「家族を壊す」などと言っている人は、単なる不勉強か、イデオロギーや思い込みの強い人であることがわかります。

「算数」は、「エピソードではなくエビデンス」で、あるいは「数字・ファクト・ロジック」と言い換えることができます。平成の30年間を考えると日本の正社員の労働時間は年間2000時間を超えており(まったく減少していない)、平均成長率は1%あるかないかです。アップル・トゥ・アップル(同じ条件のもの同士を比べること)で人口や国土、資源(の有無)等の条件がよく似たドイツやフランスと比較すると、彼らは1400時間前後で平均2%の成長を達成しています。

このデータ(エビデンス)から類推される結論は、「日本のマネジメントがなっていない」ということです。こうした明白なエビデンスがあるにもかかわらず、日本的な経営(マネジメント)が世界を救うなどと言っている人がいるのは情けない限りです。根拠なき精神論ほど社会を害するものはありません。

将来を想像するには、過去を見るしかない

タテ・ヨコ・算数の中で、「タテ(過去、歴史)」についてもう少し述べておきましょう。

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人間は単純な動物ですから、「今日よりも明日がいい」「明日よりもあさってがいい」と、一直線の考え方に馴染みやすい。しかし、実際の歴史を見ると、まっすぐに進んでいるわけではなく、ジグザグと蛇行したり、行ったり来たりを繰り返します。世界がどの方向に進むのか、正直、誰にもわかりません。

しかし、未来はわからなくても、過去に起きた出来事をヒントにしながら、将来の選択を行ったり、類推したりすることは可能です。ダーウィンの「進化論」が指摘しているように、人間が動物である以上、生き残るのは「賢さ」や「強さ」ではなく、「運」と「適応」(適切に対応)以外の条件はありません。すなわち、運(適切なときに、適切な場所にいること)を活かして上手く適応できる人のみが生き残るのです。

そして、将来を想像するには、過去を見るしかありません。悲しいことに人間には過去以外に教材がないのですから、本を読んで歴史を学び、先人をロールモデルとする必要があるのです。

新型コロナウイルスについては過去の3大パンデミック(14世紀のペスト、15世紀のコロンブス交換、20世紀のスペイン風邪)が参考になるかもしれません。パンデミックは多くの犠牲を伴いましたが、新しい世界を切り開く原動力ともなりました。例えばペストはルネサンスを生みました。

知識はもちろん大切です。しかし、時代の変化に適切に対応するためには、自分の頭で考える力こそが重要です。

どのような状況が訪れたとしても、自分の頭で考え、決断できるようになれば、自分の道を自分で切り開けるようになるのです。 

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