靴専門店「ABC-MART」を全国展開する、靴小売り国内最大手のエービーシー・マート。2000年の上場以来、2020年2月期まで19期連続で増収、16期連続で営業増益を達成してきた優良企業だが、新型コロナウイルスの感染拡大と東京五輪延期の「ダブルショック」にさらされている。
「2021年2月期業績予想の公表延期に関するお知らせ」――。国内で新型コロナの感染拡大が深刻さを増し始めていた3月16日。エービーシー・マートは、4月8日の2020年2月期決算発表に先行して新年度の業績予想を「未定」とする旨を公表した。
新型コロナが業績に与える影響については未確定要素が多く、適正かつ合理的な予想の算出が困難であることを理由に挙げた。小売業界では4月以降、2020年度の業績予想を非開示とする企業が相次いでいるが、他社に先駆けての発表となった。
五輪開催に向けて打っていた布石
エービーシー・マートの2020年2月期決算は、売上高2723億円(前期比2.1%増)、営業利益433億円(同1.3%減)となった。約260店を展開する韓国で日系ブランドの不買運動が起きたこともあり、2003年2月期以来の減益となった。ただ、赤字に陥っている靴小売り2位のチヨダや同3位のジーフットと比べれば、その健闘ぶりは際立っている。
一方、売上高は19期連続の増収となった。伸びを牽引したのは、売り上げの約6割を占めるスニーカーのうちナショナルブランドの商品だ。
同社は、国内商標権を持つアメリカのスニーカーブランドのヴァンズをPB(プライベートブランド)として展開するほか、ナイキやアディダスなど有力ナショナルブランドとも長年にわたり強固な取引関係を維持。ABC-MART専売の共同企画商品も取りそろえ、品ぞろえの豊富さで他社を圧倒している。
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