2021年2月期はエービーシー・マートにとって「勝負の年」となるはずだった。2010年代半ばに再燃したスニーカーブームを後押しする形で、今夏に開催予定だった東京五輪が需要にさらなる盛り上がりをもたらす見立てだった。実際、各ブランドから「五輪限定モデル」の仕入れを進めるなど準備を整えていた。
この1~2年、原宿や銀座、お台場などの都市部大型店の改装を進め、スニーカーやスポーツアパレル商材を多数扱う洗練された店構えへと変えてきた。これも五輪開催を見据えてのものだった。
期待していた訪日観光客の需要
特に期待していたのが、訪日観光客の掘り起こしだ。都市部店の改装と並行し、2020年2月期には免税対応店舗を約230店にまで拡大。6%程度の免税売上高比率(国内)を伸ばす算段だった。
訪日観光客への訴求強化は、既存店売り上げの底上げ以外に海外展開拡大のための布石という目的があった。同社は現在、韓国・台湾・アメリカに出店しており全社売上高の3割弱を稼ぐが、東南アジアを軸とした新規国への進出も模索中。こうした地域から日本を訪れた観光客に「ABC-MART」のブランドイメージを根付かせておくことは、現地進出をスムーズに進める一助となる。
このように満を持して迎えた新年度に襲いかかったのが、新型コロナと五輪の延期決定だった。五輪延期の影響について同社のIR担当者は、「今年度の需要は期待できなくなったが、来年への延期決定により、商品面では(五輪関連の)トレンドの需要が延命されたとポジティブに考えたい」と話す。
だが、新型コロナの影響で訪日観光客は激減。当面戻ってくる見通しが立たなくなったうえ、来年無事に五輪が開催できるかも危ぶまれている状況だ。
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