ABCマート襲う「コロナ」と「五輪延期」の二重苦 「勝負の年」に連続増収記録もストップか

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潤沢な手元資金があるからこそ、注目されるのが新型コロナ収束後の投資の行方だ。五輪後も視野に入れて、今のうちに次の一手を練っておく必要があるのは言うまでもない。

エービーシー・マートは2021年2月期の強化策として、トレンド感を重視した高単価のスニーカーやスポーツアパレルを扱う業態「グランドステージ」への都市部既存店の改装や、5月末に機能を刷新するアプリを軸としたデジタルマーケティングの推進などを掲げる。新規出店も国内で30店舗強の方針で、攻めの姿勢は堅持するもようだ。

ただ、毎年数十店単位で出店してきた国内店舗は1000店を突破。売上高も伸び続けてきたとはいえ、2017年2月期以降は増収率がそれまでの2ケタから1ケタに落ちている。

現状のビジネスモデルのままで出店拡大しても成長は鈍化するだろう。加えて最近は、ナイキやアディダスなど有力ナショナルブランドが直営販売を強化する動きも広まっている。

成長中のアパレルでもPB強化がカギ

それらを考慮すると、今後の成長へのカギを握るのはPB強化の具体化だ。直近では数万円するようなナショナルブランドのスニーカーが人気のため、5年前まで半分近くあったPB比率は現在約3割と低下傾向が続く。自社で品ぞろえや生産量を調整できるPBを拡大できれば、利益率のさらなる向上とともに、仕入れ先の動向など外部要因に左右されにくい経営体質へと強化できる。

PB強化は、新たな成長領域として力を入れるアパレルにおいても共通する課題だ。エービーシー・マートはスポーツアパレル中心の新業態「ABC-MART SPORTS」を2017年から出店、今年2月末時点で25店舗を展開する。アパレルの2020年2月期売上高は前期比で17%伸びた(実数は非公表)が、現状はナショナルブランド商品の取り扱いが大半を占める。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

エービーシー・マートのPBで知名度が高いのは、ヴァンズやイギリスブランド・ホーキンスくらい。中期的な業容拡大に向けては、新規のブランド買収も視野に入れた戦略が必要になってくる。同社IR担当者は「今のところM&Aで具体的に検討している分野はない」というが、コロナ禍による消費マインドの落ち込みでスポーツメーカーやアパレル企業の株価が値下がりしていけば、投資のチャンスが訪れる可能性はある。

1985年に靴・衣料の輸入販売商社として創業以降、海外ブランドなどとの積極的な提携戦略や高い営業力を強みに、業界首位の座まで上り詰めてきたエービーシー・マート。新型コロナと東京五輪延期を乗り越えた先に、さらなる成長を導き出せるか。真の正念場は「ダブルショック後」となりそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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