緊急事態宣言によって多くの消費者は在宅で過ごす時間が増えた。「外出が減れば、新しい靴を買おうという気持ちも湧かない。開いている店でも売り上げは減っている」と、靴メーカー関係者はこぼす。
エービーシー・マートも店舗の臨時休業や時短営業を余儀なくされている。緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大された後、国内約1000店舗のうち475店舗が週末は臨時休業となっている(4月18日時点)。
売上高の1割弱を占めるEC(ネット通販)で代替したいところだが、「実店舗を補填するほど売り上げは上昇しておらず、微増程度」(同社IR担当者)という。
3月の既存店売上高は前年同月比29.9%の減少となった。今2021年2月期は、少なくとも緊急事態宣言の続く5月まで大幅な売り上げ減少を覚悟しないといけない。夏場に期待した五輪関連需要も消滅したため、連続増収の記録が途絶えるのはほぼ確実となりそうだ。
首位の立ち位置が盤石に?
もっとも国内靴小売店で断トツ首位の地位が揺らぐ気配はない。ある靴小売店の幹部は、「もともと厳しい靴業界では資金繰りショートを懸念する企業も多数ある中、エービーシー・マートの資金力はずば抜けている。むしろ首位の立ち位置が盤石になるのでは」と予想する。
営業利益率が約16%と、小売業界では突出した高収益企業で知られる同社は、これまで着々と資金を積み増してきた。2020年2月時点の現預金は10年前比で6倍超の約1490億円。自己資本比率も87%と高水準で、実質無借金企業だ。
企業の短期的な資金繰りの余裕度を示す流動比率は629%。同業のチヨダ(282%)やジーフット(133%)と比較しても、財務健全性の高さが突出している。
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