コロナ禍で競馬が無観客開催続ける大きな意義

震災乗り越えた8年前と対照的な福島競馬場

2010年11月21日以来、福島競馬場で競走馬が走ったのは実に503日ぶりだった。あの日の1R。スターターが壇上に上がってファンファーレが鳴り終わると、場内から拍手が巻き起こった。

GⅠでも重賞でもないただのレースに自然発生で大きな拍手が起きた。筆者は震災当日に競馬場のスタンド6階にいた。この拍手でさまざまな思いが込み上げた。1Rはスタンド前のゴール手前50m付近で見ていたが不覚にも視界が曇った。福島競馬場の関係者も近くで見ていたのだが目を潤ませていた。競馬復活を喜ぶ温かい拍手だった。それはやはり観戦するファンがいるからこその拍手だった。

無観客の芝の2R。通常いるべきファンの姿はない(筆者撮影)

くしくもあの日は4月7日。8年後の同じ日付に緊急事態宣言が発出された。

そして、今年の4月11日の1Rは、あの感動の1Rとは全く違う光景を見ることになった。

静寂の中で、ファン不在の中でレースが行われたのは残念で、やはり複雑な気持ちだった。

無観客でも競馬ができるのはありがたい

福島競馬無観客の初日、福島県会津若松市出身の五十嵐雄祐騎手は4Rと5Rで騎乗した。五十嵐騎手は過去、JRA賞の障害騎手部門を表彰する最多勝利障害騎手を3回、最優秀障害騎手を1回受賞している障害の第一人者。

ここまで他の競馬場で無観客競馬を経験してきたが、あらためて地元福島競馬場での初めての無観客に「福島は応援してくれる人も多い。だからこそファンの声援がないのはさびしい。感染者が出ないように関係者みんなで頑張っている。無観客でも競馬をさせてもらえるのはありがたいし。自分たちはできることをやるだけ。早く元のにぎやかな形に戻れば」と表情を曇らせた。

福島の障害コースは馬場の内側を斜めに横切るタスキコースがある。ここに障害が設置されており、ファンは馬場内で間近に障害を飛越するところを見ることができる。

「タスキのところでファンが観戦してくれるのは福島のいいところ。そこで声援が聞こえないのは残念」と障害ジョッキーならではの感想も述べてくれた。

本来なら場内でコーヒーショップ「柳屋」を営む半沢聡嘉(あきよし)さんと妻洋子さんは複雑な気持ちでレースをテレビで観戦した。福島市置賜町で喫茶店を経営し週末は朝から競馬場の店を営業する生活を60年以上続けてきた。

2月29日から馬券発売のない福島競馬場は閉鎖。福島競馬の開幕日も場内の店は営業できなかった。現在、喫茶店の開店は不定期で、競馬場のショップは大きな収入源だ。聡嘉さんは「こんな状況なので仕方ないが、いつまで続くか先が見えないのが不安」と語る。

洋子さんは「震災後に再開した時はしばらく会えなかった常連さんと再会できた。神様に早くコロナが終息することを祈っている。元気ですかと連絡をくれる人がいるのはうれしい。元通りになってまたお店に立って、皆さんに会えるのを待ちたい」と前を向く。

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