コロナ禍で競馬が無観客開催続ける大きな意義 震災乗り越えた8年前と対照的な福島競馬場

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無観客開催を迎えた福島競馬場の後藤浩之場長は「無観客になったのは残念で、楽しみにしていたお客様にはご理解いただいきたい」と沈痛な表情を見せた。

空席のゴール前の3階。通常なら最もにぎわう場所だ(筆者撮影)

「万全な衛生管理と環境のもとで開催している。テレビやインターネットなどを通して、外出できない人たちに競馬を楽しんでいただくことに開催する意義があると思う。

新型コロナウイルスも皆さんと一緒に克服し明るい福島を取り戻せれば」と初日を終えて語った。

震災直後、当時も先が見えないと感じたことは確かだった。福島競馬場は施設にダメージを受けただけでなく、放射線量との戦いもあったからだ。放射線も目に見えない。それはコロナウイルスも同じだ。とはいえ、放射線量は測定が可能だった。幸い、高い数値ではなかった。早い段階で数字を下げるという目標も設定できた。

当時、福島で競馬再開に向けて熱意を持って尽力したJRA職員と震災当時を振り返る機会があった。「あの時は一刻も早く必ず再開するという目標があって前向きだった」と振り返る。

今回のコロナウイルスはまだまだ先が見えない。具体策が見つからない。ひたすら感染を防ぐしかない。「3つの密」を避けて不要不急の外出を控えて耐えるしかない。

関係者の努力で開催は続けられている

4月23日現在、JRA職員には新型コロナウイルスの感染者が出たが、騎手や厩舎関係者からは1人も感染者が出ていない。緊急事態宣言が出てからは騎手や競走馬の東西の移動も制限。

騎手はレース前日に調整ルームに入ることが義務づけられているが、現状は感染のリスクを回避するために認定調整ルームとして自宅やホテルから競馬場入りすることも認めた。

ターフビジョンは感染症対策の告知が流れた(筆者撮影)

無観客でも開催を続けることに最大限努力している。騎手たちはもともとレースの騎乗後には必ず手や顔を洗う。そのことは徹底されている。

現在は美浦・栗東トレセンでの調教での騎乗も最低限に抑えられている。こうした対策と関係者の努力で何とか無観客の開催を続けている。特に感染者が1人も出ていないジョッキーたちの取り組みには頭が下がる。

日本騎手クラブは4月13日に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた人々を支援する基金の設立を発表した。4月11日から各騎手がJRAで1レース騎乗するごとに1000円を積み立てる。

同クラブの会長を務める武豊騎手は「現在、無観客ではあるものの、競馬開催を続けられていることに騎手一同、大変感謝しているところです。1日も早く、皆様の日常が取り戻せるように心から願っております。我々も競馬開催を継続できるよう関係者全体で取り組んでまいります。今後とも応援をよろしくお願い申し上げます」とコメントを発表した。

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